悪路も隘路も自由自在。所有歴3年の私が「軽トラ」を購入した理由

 

かと言って輸入車となると別の意味で敷居が高い。そもそも自分が望んでいる走破性とは悪路も隘路も物ともせずにずんずん進んで行く力のことである。となればレンジローバーやメルセデスGLEなどは厳しい。性能面以前の問題が生じて来るからだ。自分にはこれらの車で悪路に突っ込んで行く勇気もそれを許す経済力もないのである。 それに悪路の方は勇気と金の問題としても、隘路に関してはそもそも車格的に既に厳しい。軽自動車同士のすれ違い通行も怪しい田舎の道でフルサイズSUVはさすがに無茶が過ぎる。「軽自動車なら」と思ったのはこの時である。ところが四輪駆動の軽乗用車はことごとくCVTである。なら商用車はどうか。ここで軽トラに出会うのである。

駆動方式は基本後輪駆動で必要ならボタン一つで四輪駆動、これで悪路も行ける。トランスミッションは電子制御式の5段マニュアル(所謂セミオートマ)、これなら環八の渋滞も怖くない。それに何と言っても安い。これで勇気100倍、如何な悪路・隘路も恐るるに足らずである。実際、今まで何度か危うい目には遭いはしたものの脱出不能となったことは一度としてない

という訳で私は少しばかり誇らしい。ホームセンターなどで大物を買った時も「お客様、軽トラックをお貸ししましょうか?」と問われるとすぐさま、「いえ、自分のがありますから」と答えるのが嬉しくてしょうがないのである。 車のタイヤ交換の際も「タイヤ、トラックで取りに伺いましょうか?」と聞かれれば、「いや自分の軽トラで前日にでも持って行きますよ」と何でもないことのようにさらりと答えてみせるのである。

ついこの間のことだが、久しぶりに遊びに来たアメリカの友人この軽トラを見るや物凄いテンションになっていた。自分も欲しいと言うのである。その友人は知り合った当時は研究職に就いていたが、今は田舎で自分のランチを経営している。そこで乗り回したいらしい。 評価は如何にもアメリカ人らしく、「こんなの誰も乗っていない」「大きなトラックがそのまま小さくなったみたいでクールである」「鹿を撃っても荷台にそのまま積める」などなどである。 友人は帰国後、必死に方々を探し回ったが結局どこにも売っていなかったらしい。「自分の所有するランチ内を走るだけだから安全基準などはどうでもいい。とにかく欲しい」と大変な執心振りである。あまりに言うものだから、ひょっとしていい商売にでもなるのでは、などとうっかり思ってしまったほどだ。

私の軽トラはついにアメリカ人をも魅了したのである。そんなふうに思うと、僅か3年ほどで傷だらけになってしまったボディではあるが、それも名誉の負傷のようでどことなくかっこよく見えて来るから不思議だ。 さて今度はどこへ行ってやろう。何を積んでやろう。

image by: Kuha455405 [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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