改憲勢力2/3割れ。安倍首相が憲法改正のチャンスを逃した理由

 

安倍流改憲は無期延期?

第2の要因は公明党を甘く見たことである。伊藤=安倍の3項加憲論には、野党の護憲派ばかりでなく公明党の改憲慎重派をも引っ張り込もうという狙いが見え見えだった。しかし公明党を改憲勢力と呼ぶのはそもそも無理があって、確かに同党は共産党や社民党のように憲法に指一本触れてはならないかの硬直した立場ではなく、時代の変化に伴って改めたり付け加えたりするのは当然だという柔軟な立場で、それを自らは「加憲」と称している。そういう意味では国民民主や立憲民主も同じようなもので、だとすると本当は「改憲勢力」には立憲や国民も含まなくてはおかしい。それがマスコミの常用語では、自公と維新がそれに該当し国民も一部入るかもしれないが立憲はダメという具合になっているのはどういう意味かと言えば、「安倍流の3項加憲論を含む9条改憲論に乗って来そうな勢力」という線引きの仕方で語っているのである。

ところがそうなると今度は、公明党は改憲勢力に該当しないかもしれないとう問題が浮上する。同党は安倍流の9条改憲論には乗らない可能性がますます高まっているからである。なのに相変わらず同党が何の疑問も付されないまま「改憲勢力」にカウントされているのは、自民党側からの願望を込めた印象操作にマスコミが安易に協力しているからである。だから本当は、護憲派共産社会)、加憲派&安倍改憲反対派公明立憲国民)、9条改憲派自民維新)と区分するのが正しい。そこで安倍首相が9条加憲論を扱うに当たっては、公明党と特別に親しく議論をして納得ずくで与党としての足並みを揃える努力をすべきだったが、余りにガサツに「どうせ公明党はゲタの雪で追随してくるだろう」と高をくくったのが間違いである。

第3に、それで困って、国民民主党に盛んに秋波を送り始めているというが、同党主要部分はそもそも加憲論だし、増してこの選挙で安倍改憲に反対する共通政策を掲げて野党統一選挙を戦ったばかりで、そこからさっさと離脱して安倍首相の救援に駆けつけたのでは、同党の将来はますます暗くなる

というわけで、私の判断は、この選挙の結果、安倍首相の改憲策動はほぼ頓挫し、今後、自民党の全体、公明党、さらに国民民主の一部まで巻き込んで新たな改憲運動を巻き起こす可能性は限りなくゼロである。開票日夜のテレビで安倍首相は改憲発議と国民投票について「期限ありきではないが、私の任期中に何とか実現したい」と語ったが、これは負け惜しみでその条件はほとんど存在していない

ということは、安倍晋三氏が総理の座に留まっている理由が消え始めたということで、まあこれからもバタバタと「やっているフリ」の手数を増やして生きながらえようとするのだろうが、「改憲」の勝負で負けたらもう何をやってもこの人にとっては余生でしかあるまい。ここから安倍政権は下り坂を転げ始める

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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