映画より進化の速いスマホに比べ、人型ロボットが進化しない理由

 

そもそも何故人間の機能を機械に持たせる必要があるのか、言い換えれば何故人間に似せる必要があるのかというと、人間を取り巻くありとあらゆる物が人間に合わせてデザインされているからである。そして、その中でロボットが何らかの役に立つとするなら当然人間に似ていなければ不都合が生じるという訳である。考えてみれば、ドアノブを適切に扱えなければ部屋から出ることもできない。扉の前でウンウン唸って立ち往生しているロボットなどあまりに滑稽で見るに堪えない。

ここで皮肉な発想の転換が起こる。ロボットに物理的にドアを開けさせるよりは、ドアの開閉自体を電子的に制御した方が遙かに合理的であり利便性も高いということに気付くのである。この時点でロボットからドアを開けるための手が消える。これが人型ロボットがなかなか生まれて来ない理由である。

ロボットに物理的に人間の代わりの動作をさせるよりも道具などの対象物自体に自動制御機能を持たせる方が遙かに簡単ということである。分かり易い例を挙げると自動車がそうである。わざわざ人型ロボットを作ってハンドルやアクセルを操作させるくらいなら自動車自体に自動運転機能を付けた方が遙かに合理的であるから実際そうなっている訳である。

ロボットが人型に結実しないのは、この式で手が要らなくなり、足が要らなくなりするからである。逆に言えば、ロボットはその機能を分散して、そこら中に存在しているということになる。そう考えると、我々を取り巻く全ての物にロボットの機能が備わり、ロボットそのものはロボットとしての実体を持たない、というのが究極のロボット社会なのかもしれない。

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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