でも、これは個々の家族の問題ではありません。平成の日本の労働市場は、若者(特に男性)の雇用を破壊することで、中高年(団塊の世代)の雇用が守られたのです。そのつけを、たまたま時代の巡り合わせが悪かった人たちに、負わせていいはずがありません。
経済的に余裕があり、自分の子供たちも無事、この時代を乗り切っている団塊の世代以上の人たちは、これは対岸の火事のように思うかもしれません。でも、私には、誰にでも起こりうることだと思えます。そして、誰が悪いのでもないのです。その人たちが「生きていける場づくり」は、社会全体の問題だと思えるのです。
先日、ひきこもり対策に関して、専門家が語っていた言葉が印象に残っています。
「なんとか社会に復帰させようとか、就業させようとかいうのではなく、今のままでも、穏やかに生きて行ける道をつくって精神的に安心させてあげることが必要。本人は、十分、このまままではいけないと自分を責め、親がいなくなったらどうなるのかと不安にさいなまれて、社会に自分が必要とされていない絶望を感じているのだから」
…と。いろいろな要素が絡み合っている社会を一つのことだけにフォーカスして一気に変えていくのは難しいかもしれませんが、一人、一人の思いは変えられます。「絶望」を抱えている人たちが、社会の中でひっそり暮らしているという現実だけは、忘れないでいたいと思います。
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