なぜ「おはぎ」と「惣菜」しかないスーパーに大行列ができるのか

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宮城県の秋保温泉に、スーパー業界で知らない人はいないと言われるほどの有名店があります。連日開店前から行列ができるその人気の秘密は、ごくごくシンプルな「あるもの」でした。今回の無料メルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』では著者で繁盛戦略コンサルタントの佐藤きよあきさんが、このお店が人を惹きつけてやまない理由を考察しています。

「主婦の店・さいち」に行列ができる、ごく当たり前な理由

宮城県仙台市・秋保温泉に、その小さなスーパーはあります。たった80坪ながら、年商6億円を売り上げ連日開店前から行列ができるお店です。

その行列客の目的は、「おはぎ惣菜」です。おはぎは、1日平均5,000個土日祝日は1万個彼岸には2万個売れるという、おばけ商材なのです。惣菜は300種を用意し、おはぎとともに瞬く間に売れてしまうと言います。おはぎと惣菜を合わせて、スーパー全体の売り上げの50%を占めるというから、驚く他ありません。

このお店は、スーパー業界で知らない者がいないほどの有名店です。スーパー・コンビニからの視察も多く、研修も無料で引き受けています。さまざまなメディアが取り上げ、繁盛の秘密は明らかになっています。

もっとも注目すべきは、おはぎと惣菜のすべてが手づくりであること。社長夫人である専務を中心に、おばちゃんたちが一から手づくりしています。驚くべきは、レシピもマニュアルもないこと。口伝えで教え、五感で憶えてもらうのです。

レシピ・マニュアルに頼ると、失敗した時に「マニュアル通りにした」と言い訳をしてしまいます。レシピ・マニュアルがなければ、すべてが自分の責任となり、逃げ道がなくなります。その積み重ねが、“経験の味を生み出すのです。一人ひとりが熟練者になれば、失敗は少なくなります。

さらにこのお店は、商品のロス率を限りなくゼロに近づけています。これまでに蓄積した、天候や気温、客数、売り上げなどによるデータをもとに、その日の客数や売り上げを予想しロスをゼロにするのです。材料の無駄をなくし、売れ残りや廃棄を抑えるように努力しているのです。

一般的には、材料の無駄や売れ残りを想定したロス率を原価に含んだ値つけをしていますが、このお店ではロス率を計算に入れていません。それが、安さに繋がっているのです。

そしてこのお店は、他のスーパーをライバル視していません。自身の信じる商品・売り方を実践し、価格競争に巻き込まれないようにしているのです。よって、チラシも打っていません。その広告費分も安くなっている、ということです。効率化を重視するチェーン店とは、真逆の商売をしているのです。

面白いのは、名物のおはぎを目当てに、遠方から来るお客さまが多い上、秋保温泉の観光客までもが、朝の行列に並んでいることです。そんなスーパーは他にありません。

以上が、このお店に行列ができている主な理由なのですが、これらは後づけでしかありません。本当の理由は、行列に並んでいるお客さまの声に集約されます。

美味しいから」。

おはぎも惣菜も決して洗練されたものではありません。おはぎはボテッと大きく、惣菜の色合いは茶色く地味です。それでも行列をしてまで買いたいと思うのは、「美味しいから」。

普通のスーパーは、「価格に見合った価値」を作ろうとします。しかしこの店は、美味しいものお客さまの喜ぶものを作り納得できる価格をつけて売っているのです。同じような意味合いに感じるかもしれませんが、まったく逆の発想なのです。ここを間違えているから、普通のスーパーには行列ができないのです。

“このお店は美味しい”。

行列ができている理由は、ただそれだけなのです。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 佐藤きよあき(繁盛戦略コンサルタント) 【発行周期】 週刊

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