決裂の米国。死神ボルトンの電撃解任は日本にとって吉か凶か

 

トランプが北朝鮮と妥協する可能性

ボルトンさんは、対北朝鮮でも最強硬派」です。北朝鮮に限っていえば、ボルトンさんは、日本の強い味方でした。なぜ?ボルトンさんは、「完全非核化がなるまで制裁を解除してはならないと主張している。長い間北朝鮮に関わってきた彼は、北朝鮮の狡猾さを知り尽くしている。

一方、金正恩は、中国、ロシア、韓国の支持をうけて「段階的非核化を主張しています。これは、何でしょうか?北朝鮮が少し非核化する。国際社会は、少し制裁を解除する。また北朝鮮が少し非核化する。国際社会は、また少し制裁を解除する。このプロセスを繰り返し、完全非核化までつづけるというのです。どこが問題なのでしょうか?

中国ロシア韓国は北朝鮮を支援したくてウズウズしています。制裁が緩和されれば、お金が洪水のように流れ込み、北朝鮮経済は、急成長しはじめるでしょう。金正恩が最終的な完全非核化を約束している唯一の理由は、金(かね)です。制裁が緩和されて大金が入ってくれば、なぜ非核化する必要があるのでしょうか?

金正恩は、「お父さんがアメリカをだましたやり方で、僕もだますことができたよ。ヤンキーは、ホントバカだよね!」と金正日に報告することでしょう。トランプさんが、「しまっただまされた!」と後悔しても、時すでに遅しです。再び制裁を強化しようとしても、今度は中国、ロシアが反対する。「北朝鮮は、ICBM実験も核兵器実験もしていないだろう」と。

というわけで、北朝鮮についてはボルトンさんが正しい。彼が首にされた今、「トランプは、金に妥協するつもりなのではないか」と疑念がわいてきます。

まとめます。ネオコンの大物ボルトンさんは、イランに対しても、北朝鮮に対しても「最強硬派」。彼が去ったことで、アメリカは、イラン、北朝鮮と和解にむかう可能性がある。アメリカとイランの和解は日本にとっていいことである。アメリカと北朝鮮の和解は、北が核を保有したまま制裁緩和にむかう可能性があり、日本にとってとても悪い。というわけで、ボルトンさん解任は、日本にとって、「いいニュース」であり、「悪いニュース」でもあるのです。

image by: Gints Ivuskans / Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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