CoCo壱番屋がインド進出の衝撃。本場の評価は甘いか、辛いか?

 

ココイチがインドで苦戦しそうな理由

こうしてみると、カレー業界ではココイチの存在がいかに大きいかがわかる。

ココイチの1号店が誕生したのは1978年。翌79年には愛知県にフランチャイズチェーン(FC)本部と工場を完成させた。97年に佐賀県、99年に栃木県にそれぞれ工場を完成させている。これらの工場でカレーソースを製造し全国の店舗に供給している。

工場を建設するには莫大な費用がかかるが、店舗数が増えれば1店舗当たりの工場の費用負担は減るので、店舗数を増やせば増やすほどコスト競争力は高まる。これを原動力の1つとし、店舗網を拡大してきた。

ココイチは豊富なメニューが売りだ。グランドメニューのカレーライスは40種類以上ある。オーソドックスな「ポークカレー」のほか、魚介類を使った「海の幸カレー」や、野菜類を使った「野菜三昧カレー」など豊富だ。他に、地域限定のメニューや期間限定のメニュー、カレーラーメンといった非カレーライスメニューもある。トッピングも豊富だ。加えて、ルーの種類や辛さ、甘さ、ご飯とルーの量が調節でき、幅広いカスタマイズが可能となっている。

カレーライスは家庭でも食べる機会が多いので、メニューの幅が狭いと飽きられやすい。ココイチは前述の通りメニューの幅が広いので、顧客を飽きさせないことに成功した。

幅広いメニューは客単価を押し上げる効果もある。定番のポークカレーは税込み505円(一部地域は484円)と低価格だが、他のカレーは700円台が多く、それほど安くはない。これらにトッピングを加えると1,000円程度になるケースもある。ココイチではトッピングを加える客が多く、高い客単価を実現している。

日本で圧倒的な力を誇るココイチがカレーの本場インドに進出する。三井物産と共同出資で新会社を設立した。三井物産が持つネットワークや知見と、壱番屋のカレー店運営のノウハウを持ち寄り、インド市場を攻略する考えだ。

インドには日本のカレーを持ち込んで勝負する。現地の食習慣に合わせ、動物性食品を含まないルーを日本の工場で製造し、インドに輸出する。20年をめどに1号店を首都のニューデリー近郊に出店する計画だ。10年後にはFC含めて30店を目指すという。

はたしてココイチのインド進出は成功するのか。筆者は成功はかなり難しいと考えている。インド人は食に関して保守的で見慣れない食べ物に手をつけたがらないとされているためだ。

日本のカレーはインドで食べられているカレーとは大きく異なる。日本のカレーは小麦粉でとろみをつけうま味やコクを特徴とする。一方、インドのカレーは小麦粉を使わずサラッとしていてスパイスが効いているのが特徴となっている。両者は別物とする向きが強い。インド人にとって日本のカレーは「見慣れない食べ物」となり、すぐには受け入れられないだろう。

インドで成功している外食チェーンの多くは商品をインド人向けにアレンジしている。例えば「マクドナルド」がそうで、スパイスが効いた料理を好むインド人に合わせたメニュー構成にして人気を博すようになった。

インドでは、外国料理では中華料理が根付いているが、インド人向けにアレンジしているものが大半だ。インド独特のスパイスを入れるなどしてインド人が好む味付けにし、「インディアンチャイニーズ」として親しまれている。

ココイチもインド人向けにアレンジする可能性はある。ただ、日本式のカレーを持ち込むということなので、ルーはアレンジしないということだろう。一方で具をインド人向けにすることが考えられる。だが、主役はあくまでも「ルー」だ。やはり日本のルーが受け入れられるかが重要となるだろう。

なかなか難しい挑戦となりそうだが、応援はしたいところだ。ココイチは国内では飽和感が漂っており、海外市場の開拓が急務となっている。本場インドで成功し、海外展開に弾みをつけたい考えだ。ココイチがインドで通用するのか、注目が集まる。

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東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。

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【著者】 佐藤昌司 【発行周期】 ほぼ日刊

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