5G SA時代に登場する「ライトVMNO」と「フルVMNO」――仮想化基盤におけるMVNOとMNOの競争環境のあるべき姿とは
この10年、些末で不毛な議論を延年と繰り返してきた有識者会議であったが、9月20日の会合ではとても勉強になる話が聞けて、本当に良かった。もちろん、有識者サイドから出てきた話ではなく、一般社団法人テレコムサービス協会MVNO委員会からのプレゼンが最高だったのだ。
テーマは「5G時代における二種指定制度に係る課題に関する意見」。5GのSA(スタンドアローン)時代には仮想通信事業者には2つの方向性が考えられるとしたのだ。
3Gや4Gまでは、MVNOはMNOと接続点(POI)でつながっており、そこで接続料が発生していた。5G SA時代にはコアネットワークが仮想化されることでネットワークスライシングが可能となり、MVNOとMNOの関係性や競争環境が変わってくる。そのため、5G時代に想定される新しい仮想通信事業者のあり方が示されたのだ。
ひとつは「ライトVMNO」。MNOの仮想基盤を活用することで、MNOと同等の高いサービス自由度を有し、QoSによる高い付加価値を実現するタイプの仮想通信事業者だ。
もうひとつが「フルVMNO」。MNOから独立した仮想基盤を有し、MNOや他の無線網を活用しつつ、すべてのレイヤでMNOに依存しない独自の付加価値を可能とするタイプの仮想通信事業者のことをいう。
詳細は今後、総務省のサイトで公開される配布資料を参考にしてほしいが、いずれにしても「仮想通信事業者が5G時代の仮想基盤でMNOとどのように競争していくか」という、MVNOのあるべき未来の姿が語られていてとても興味深かった。
ただ、残念だったのが、有識者たちの反応だ。プレゼン終了後、開口一番「わからないことだらけ」と切り捨てられてしまった。普段、意気揚々と上から目線でキャリアを追い詰める有識者もだんまりだったりと、プレゼンの内容がさっぱり理解できていないようだった。
本来であれば、5G SA時代の競争環境をいまから整備しておくというのは、総務省がやるべきことだろう。これこそ通信分野における競争政策ではないか。しかし、MVNOがその未来の姿を提案し、競争ルール作りのお願いをしているにもかかわらず、全く興味すら示そうともしないのには呆れてしまった。
自分たちが理解できるSIMロックや接続料に対しては高圧的に規制を作るのに対し、日本の将来における通信政策を描く議論に関してはまともに参加すらできていない。このままでは、日本のモバイル業界は世界から大きく取り残されてしまうのではないだろうか。そんな危機感を抱いてしまった。
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