日本語誕生の秘密。表意文字と表音文字を使いこなす稀有な言語

 

そこで我々の先人達は考えた。例えば「やまとうた」などで詠まれるような日本人ならではの心情くらいはどうにか日本語として残すことができないか、と。その結果漢字の日本語化が行われた。

その方法は四大別でき、

  • 正訓
  • 義訓
  • 借音
  • 借訓

というふうになる。

このうち正訓と義訓は(音のある)表意文字として、借音と借訓は表音文字として用いる。

四季を例に簡単に説明すると

  • 正訓spring 「春」を「はる」と読む
  • 義訓autumn 「金」を「あき」と読む
      五行で言うと「金」は「秋」に相当するから
  • 借音summer 「奈都」を「なつ」と読む
  • 借訓winter 「経湯」を「ふゆ」と読む

となる。

面白いのは義訓で、意味的に相当さえしていればいいのだから時に悪乗りのレベルまで行く。「恋水」を「なみだ」とロマンチックに読んだり、「十六」を「しし(=鹿・猪)」と掛け算風に読んだりするのが好い例である。これらは遊びが過ぎるということで特に「戯書」と言われている。

ここで注目しなければならないのは、(音のある)表意文字と表音文字を既に使いこなしている点である。これは「漢字」と「かな」混じりの現代の日本語表記と根本的には変わらない。その意味においては、我々の先祖は実に効率よく文字というものを獲得したと言えるのではないだろうか。

image by: 日本古典籍データセット(国文研所蔵)CODH配信 [CC BY-SA 4.0], via Wikimedia Commons

山崎勝義この著者の記事一覧

ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 8人ばなし 』

【著者】 山崎勝義 【月額】 ¥220/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 火曜日 発行予定

print
いま読まれてます

  • 日本語誕生の秘密。表意文字と表音文字を使いこなす稀有な言語
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け