ウクライナ革命、アメリカの狙いはウクライナの「資源独占」か?
ここまでの話だけでも、日本人には「かなりびっくり」でしょう。ウクライナ革命の動機についてプーチンは、「ロシア封じ込め政策の一環」としています。しかし、ロシアではもう一つ、「アメリカがウクライナの資源独占を狙った」という話が「定説」になっています。
私は、「アメリカの狙いは資源か?」と「?」マークをわざわざつけました。理由は、残念ながら日本語の資料がなく、「間接証拠」しか提示できないからです。しかし、興味深い話なので、書いておきます。
出所は、ロシア国営テレビ「RTR(エル・テー・エル)」の人気番組「ヴェスティ・ニデーリ(週刊ニュース)」(2014年5月18日放送)です。この番組、研究者の間では、「クレムリンのプロパガンダマシーン」と呼ばれていて、もちろん丸ごと信じるわけにはいきません。しかし、これからお話する件は、私自身が「事実であること」を確認しています。
なんの話か?司会のキシリョフさんは、バイデン副大統領の次男ハンター・バイデンが「ウクライナに出張した」といいます。「ハンター・バイデンって誰だ!?」ですね。誰でも入手できる情報源として、バイデン副大統領をウィキペディアで検索してみましょう。そこには、こうあります。
ロバート・ハンター・バイデン:次男(1970年-)。
現在はロビイングを手がける事務所オルデイカー・バイデン&ブレアLLPの共同設立者ならびにアムトラックの経営委員会の副議長を務める。
お父さんは副大統領、さぞかし「ロビイング」(ロビー活動)もうまくいくことでしょう。キシリョフさんはつづけます。
「バイデン副大統領の次男が、ウクライナでシェールガス採掘権を取得している企業BURISMAに出張した」
BURISMA?日本人にはまったく聞きなれない名前です。しかし、いまの時代、どこの会社もインターネットにホームページ(以下、HP)をもっていますから、日本人でも確認することができます(Burisma Group)。
私は、この番組を見て、即座にHPを調べたのですが、「おお!」という感じでした。ありました。そして、即座に画像をパソコンに保存しました。そこには、「ハンター・バイデンがBURISMAの取締役に就任した」旨(むね)のプレスリリースがあったのです。
残念ながら、今は削除されていますが、BURISMAのHPを見れば、いまだにハンター・バイデンさんの存在を確認できるでしょう(北野註:5年経って、ハンターバイデンはすでに取締役ではないようです)。
キシリョフさんは、アメリカ合衆国副大統領の息子が、ウクライナのシェールガス利権の最中枢に入り込んだ件について、こんなコメントをします。
パパ(バイデン副大統領)は、政治的保護を与え、息子は、現場に行く。アメリカはウクライナ人に、「民主主義の重要性」を説きながら、本音は、「資源」を狙っている。アメリカは、資源のために戦うが、「自分で戦うこと」は「流行」ではない。戦いは、「原住民」(ウクライナ人)にやらせよう。
つづいて番組では、「ウクライナのどこに石油・天然ガスがあるのか?」が映し出されました。
西部、カルパトスカヤ。東部、ユゾフスカヤ。南部、プリチェルノモルスコークリムスカヤ。
ウクライナ西部は、当時から親欧米新政権が掌握していたので、問題ない。しかし、アメリカの「ウクライナ資源利権独占」を妨げていたのが、同国からの独立を宣言した、いわゆる「親ロシア派」の存在でした。
番組が放送された2014年5月18日当時、戦闘がおこなれていたのは、スラヴャンスク、クラマトルスク、ドネツク、マリウポリ。これらの諸都市には、いずれも油田・ガス田が存在している。つまり、ロシア国営テレビは、「アメリカは、ウクライナの石油・ガス利権を狙って、革命を起こした」と見ているわけです。
日本では、「トンデモ系」「陰謀論」的見解ですが、私たちは、少なくとも「バイデン副大統領の次男が、ちゃっかりBURISMAの取締役に就任した」ことは確認できます。
私は、「事実だけを見ましょう」と書きました。ハンター・バイデンさんが、BURISMAの取締役に就任したのは、「事実」。「アメリカが、そのために革命を起こしたのかどうか?」は、証拠がありません。
5年前の本に書いたこと。今さら世界的問題になって、驚きです。この話からわかることは何でしょうか?「クレムリン情報ピラミッドもたまには役立つ」ということ。
もう一つ、トランプ弾劾について。
「ウクライナに圧力をかけたのは、トランプではない。ジョー・バイデンだ!」
これは、別に彼が安倍総理に、「靖国に行くなよ!」と命令したから書いているわけではありません(笑)。
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