繁忙期などに、本来仕事が休みの日に命じられる「休日労働」ですが、その日に年次有給休暇を充てることは可能なのでしょうか。今回の無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』では著者で現役社労士の飯田弘和さんが、誰の身にも起こり得る、年次有給休暇取得での間違えやすい事例や、会社サイドに立ったトラブル予防措置を紹介しています。
休日労働と年次有給休暇について
どうしてもトラブルになることが多い年次有給休暇。今までも年次有給休暇について、何回かお話しする機会がありましたが、今回もまた、年次有給休暇についてのお話しです。
会社が休日労働を命じたとします。この場合、その日に年次有給休暇を取得することができるでしょうか?
この場合、年次有給休暇取得はできないとされています。年次有給休暇は、所定労働日について取得するものです。休日は、所定労働日ではありません。それが法定休日であろうが所定休日であろうが、とにかく所定労働日でない以上(たとえ休日労働という労働日であっても)、年次有給休暇取得はできません。
これは、たとえば休職期間中であっても、同様に考えられます。すなわち、従業員が私傷病その他何らかの理由で「休職」している場合、休職期間中は労働義務が免除されている期間であるため、この間に年次有給休暇をあてることはできません。
少しややこしいのが、労災や通勤災害等で長期療養中の者の「休業」期間中の年次有給休暇の取り扱い。この期間については、年次有給休暇の取得が可能であるとされています。労災保険の休業補償給付や休業給付よりも、年次有給休暇の賃金の方が高くなるため、年次有給休暇取得を希望する者が出てきます。長期療養中の者は、実際には働くことができない状態でしょうが、労務提供義務が免除されているわけではありません。そこが、「休職」と異なる点です。
「休職」とは、会社の命令または本人の申出を会社が承諾することで、休職理由が消滅するまでの間、労務の提供義務が免除されているのです。労働義務がない以上、その間に年次有給休暇を取得することはできないのです。
話を元に戻して、もし、従業員が休日労働を命じた日に休んだ場合、会社としてどういった対応を取れるでしょう?先ほど話したように、休日労働日に年次有給休暇をあてることはできません。となると、休日労働を命じた日に休んだのであれば、業務命令違反となります。したがって、懲戒処分を科すことも可能です。
ただし、懲戒処分を科すには、就業規則等に定めが必要です。また、懲戒権の濫用は許されません。必要のない休日出勤であったり、その従業員への嫌がらせのための休日出勤命令であれば、休日出勤拒否を理由とした懲戒処分は濫用とされます。逆にいえば、休日労働を命じる必要があり、その命令に従わないときは懲戒処分を科す規定が就業規則等に定められていれば、休日労働拒否者に対し懲戒処分を科すことができます。
このように、従業員と会社との間のルールを定めた「就業規則」の存在はとても重要です。就業規則の懲戒規定を、今一度、確認してみて下さい。また、就業規則あるいは労働契約書等に、必要に応じて休日労働を命じる定めがあるかどうかも確認してください。
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