一般店舗とは質感の違う歓迎の空気。進化する「福祉系カフェ」

 

一か所目は神奈川県藤沢市の「ミュージック・オブ・マインド」。そば粉を使った手作りのガレットやパスタ生地から手作りした手打ちパスタなどのカフェメニューに定評があり、利用者がこれらの料理を作る「職人」として役割を担う。

このメニューに合わせるコーヒーは鎌倉市の鎌倉小町通りにある20年の老舗「カフェ・ロマーノ」の直伝。ネルドリップで丁寧に落とした一杯は味わい深い。紅茶もダージリンやアールグレイのほか、白桃や巨峰などのフレーバーティー、季節限定のお楽しみの紅茶もある。

そして、最大の特徴は「ライブカフェ」であること。つまり、ライブ活動が中心であり、カフェはコミュニティとしての場所づくりのコンテンツとなる。私がガレットを食し、デザートの和風パフェを食べている時に、ライブが始められ利用者が横二列に並び、ピアノとドラム、パーカッションとギターの演奏とともにカバー曲とオリジナル曲2曲を演奏して盛り上がる。

ピアノやギター、歌のリードなど演奏の脇を固める支援者はプロの演奏家でもあり、それもまた本物だ。外でのライブも定期的に開催しており、利用者もタレント揃いで歌い手を楽しんでいる様子が幸せな気分になる。

東京都葛飾区の「ヴィゼ・ポレール」はパンを中心にしたメニューが特徴的だが、福祉系カフェといえば、食べやすい柔らかいパンと菓子パンを提供するのがこれまでの通例だったが、ここの商品の主力はヨーロッパで食べているような固めのハード系のパン。本物の素材と製法でしか出てこない味わい深さが本物だ。

東京都世田谷区の有名店「シニフィアン シニフィエ」の志賀勝栄シェフが技術指導を行うから品質の追究は福祉系を超えているかもしれない。このパンによく合うコーヒーは、コーヒー専門店「堀口珈琲」(本社・東京都世田谷区)が支援している。この組み合わせのパンのプレートはヨーロッパにいるような気分。

この噛めば噛むほどうまみが増すパンにうなりながら、これは是非多くの人に味わってほしいと思いつつも、福祉事業所であることから土日祝日は休み。営業は午前と午後の時間で、昼食時を除けば飲食店の「アイドルタイム」にしか営業できないとのこと。是非、この時間に合わせて、足を運んでもらい、素敵な福祉系カフェに出会い、幸せな時間を過ごしてほしいと思う。

image by: Shutterstock.com

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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