では、どうして民間なのかということですが、これは仮に民間ではなく、大学入試は大学によって実施するとして、4技能判定を行うノウハウと、マンパワーは大学にはないからです。
一方で、国語や数学の「記述式」についても民間委託への批判が出ています。こちらに関しても同じことで、民間がそんなことを引き受けるのは本来いいことではないし、引き受ける企業としてもリスクがあるので、ものすごくエキサイトしてやっているのではないと思います。
どうして「記述式」の採点を民間委託するのかというと、大学の現場はもうヘトヘトで負荷はかけられないからです。ただでさえ、国公立も私立も、入試シーズンの1月から3月までは「禁足令」が出ていて、教員は海外でどんなに重要な学会があっても出張禁止、主要な調査活動も禁止になっています。そのために、日本の研究水準、学説などの発信能力に問題が出ているのです。
では高校にやらせればいいとか、高校の先生に監督をという話もありますが、これこそ「利害相反」になります。高校教師はその高校からの進学実績が良ければ評価が上がるわけで、「先生だから公正な採点をするだろう」などという見方はできません。
ということで、消去法で民間委託となっているわけです。しかも不祥事が出れば、企業イメージは潰れますから、文科省としては気楽というわけです。
じゃあ、左派はどうして民間委託に反対しているのかというと、受験生や親、高校の不安心理を政治的に利用しようとしているのに加えて、大学でのポジションを増やして組合的な既得権を太らせようとしているのかもしれません。
いずれにしても、英語の4技能試験を先送りし、今度は記述式にもイチャモンというのは改革には逆行です。何度も申し上げますが、ここは萩生田大臣の首と引き換えに、改革を死守すべきでした。
同時にベネッセなど民間業者に関して言えば、利害相反疑惑や利益誘導、不正などを批判されるリスクが大きいのですから、入試関係の業務は非営利団体などに移管すべきと思います。
アメリカの場合では、SATやTOEFLの開発は民間委託とは言え、ETSという非営利団体がやっています。これにならって、社会的信頼を得るべきではないかと考えます。本件に関する私の見解としては以上です。
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