話題の血液クレンジング。老化や冷え性の防止、癌予防に効くなどの情報がある一方で、それらを否定する意見があるのも事実。試したい気持ちはあるものの、どうなんだろうと迷っているも多いのではないでしょうか。そこで、メルマガ『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』の著者で米国在住の医学博士・しんコロさんが、血液クレンジングの人気の理由について解説。また、血液クレンジングを例に一歩踏み込み、医学や科学の情報がどのように患者に伝わっているのかについても明かしてくれました。
話題になった「血液クレンジング」って本当に効果があるの?
Q1. こんにちは、最近血液クレンジングという言葉をよく聞きます。冷え性にいい、とかいろいろ。果たしてどうなんでしょうか。また、どうやってするんでしょうか。全然分かりません。
しんコロさんの回答
いわゆる「血液クレンジング」とは、血液を取り出してオゾンを混ぜ、また体内に戻すという代替療法です。結論から言うと、オゾンは医療分野で使用されてきた歴史がある一方で、この代替療法はまだエビデンスが少なく安全で効果があるとの認識には至っていません。中には心疾患などの重篤な副作用を引き起こした例もあります。
この代替療法は有名ブロガーや芸能人の血液クレンジングの体験談が拡散の火種となったようで、ネット上で炎上しました。こういった微妙な療法は一般の方々には判断が難しいのは理解できます。そもそも病院が宣伝しているのですから「医者が大丈夫と言うなら大丈夫なはずだ」と思ってしまうのも無理はありません。
歴史的に、どんな療法やサプリメントもエビデンスが少なければ少ないほど「次世代の療法」「万能薬」等と誇張されてマーケティングされる傾向があります。一般の方々には、それがエビデンスがあるのか無いのかも判断ができないので、医者が勧めたら信じてしまうのも無理はありません。
「一部の有名人や医師が正しい知識を伝えていないのが悪い」という意見が一般的だと思いますが、そういう環境ができやすいのは「データやエビデンスの監視機構」が働かないという理由もあると僕は思います。
つまり、正しい知識が拡散しにくいのは、ほとんどの科学データが一般には公開されず、一部の学術機関しかアクセスが無いからです。PLOS 等の一部のジャーナルはデータを無料で一般公開していますが、基本的に科学の知識はオープンソース(誰でもアクセスできること)ではないので、一般への伝達が行われず、上記の監視機構が動かないのです。
それだけでなく、データが閉鎖されていることでイノベーションも遅れるのだと僕は考えています。コンピューターサイエンスでも、オープンソースのプログラムは皆が改良して広く使われるようになりますが、企業内だけでしか扱わないプログラムはいつまでたってもバグだらけなのと似ています。
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