社員の声に耳を「傾けすぎる」と会社はどうなってしまうのか?

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企業が現場の声に耳を傾け問題を解決することは、社員のモチベーション向上や組織の体質改善に繋がることは間違いありません。しかし、その声にどこまで対応すべきなのかという判断は難しいところです。今回の無料メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』では著者で特定社会保険労務士の小林一石さんが、セクハラを受けたという社員が会社を訴えた裁判を取り上げ、的確な判断の必要性を説いています。

「セクハラ加害者を解雇して欲しい」に会社はどこまで対応すべき

社員の不満や不安を「聞く」ことは大切ですが、「聞きすぎると対応が難しくなる場合があります。

例えば、社内アンケート。社員の状況や気持ちを確認するためには重要なツールではあります。ただ、場合によっては「言うほどではなかったけどアンケートがあるなら書いておこう」と不満や不安が大量に出てきてしまうこともあります。

もちろん、どのような形であれ不満や不安があるのであれば、それを聞き出して解決することは良いことではあります。ただ、あまりに理不尽なことまで対応していたらきりがないですし、どこまで対応するかはその判断が難しい場合も多いでしょう。

では、法律的にはどう判断すべきなのか。

それについて裁判があります。ある会社で事務を担当していた社員が別の社員からセクハラを受けたとして会社を訴えました。その社員は、セクハラを受けたことによって医者からは抗うつ状態と診断され自殺未遂も行っていたのです。具体的には、その社員は次の点を会社の対応不足と主張しました。

  • セクハラについて全社員からも聴取すべきであったのにしなかった
  • セクハラをした社員の懲戒処分を行っていない
  • 配置転換等の適切な対応をしていない

確かに、もしこれらを会社がしていないのであれば会社は訴えられてもしょうがないと言えるかも知れません。では実際にどうだったか。実は、本当にしていませんでした。全社員からセクハラについての聴取もせずセクハラをした社員の懲戒も行わず配置転換もしていませんでした。

ではこの裁判はどうなったか。

会社が勝ちました。「会社の対応は問題無し」と裁判所は判断したのです。どういうことか。具体的には次のように裁判所は判断をしました。

  • 会社は(セクハラを受けた社員の)相談を受けてすぐにセクハラをした社員から事情を聞きセクハラと思われるメールの全文を確認している。よって、プライバシーに関わるこの問題に対し、あらためて全社員に確認を行うことが必須とは言えない
  • (セクハラをした社員の)行為は一度、食事に誘って一緒に行ったこと、恋愛感情を持っているようなメールを送ったこと、にとどまりそれほど悪質とは言えない上に、会社からの指導によりそれらの行為を止めており、それ以降にメールを送った証拠もない。会社が厳重注意にとどめて厳しい懲戒処分を行わなかったことは不合理とは言えない
  • 会社には事業所が1ヶ所しかなく配置転換は困難だった。また、(セクハラをした社員とされた社員の)仕事上の接点は伝票の受け渡し程度でそれほど大きいものではなく、それでも会社は受け渡し方法の変更や担当者の交替などを認めておりそれ以上の対策を取らなかったからといって不合理とは言えない

つまり、「(セクハラを受けた社員の要望通りではなかったが)会社は充分に対応した」と、判断されたということです。

いかがでしょうか。これは実務上もとても大切なポイントです。このセクハラを受けた社員の主張が完全に間違っていると言うつもりはありませんし、気持ちもわかります。ただ、「どの程度対応するかには慎重な判断が必要です。例えば、「あの社員からセクハラをされたので解雇にしてください!」で、安易に解雇にしてしまったら今度は逆にその社員から「不当解雇だ!」と訴えられかねません。

今回の裁判例のように、セクハラ事案であれば当然ながら被害者側の社員の気持ちは最大限に受け止めるべきです。ただ、どのように対応するかは的確な判断が必要なのです。

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【社員10人の会社を3年で100人にする成長型労務管理】 社員300名の中小企業での人事担当10年、現在は特定社会保険労務士として活動する筆者が労務管理のコツを「わかりやすさ」を重視してお伝えいたします。 その知識を「知っているだけ」で防げる労務トラブルはたくさんあります。逆に「知らなかった」だけで、容易に防げたはずの労務トラブルを発生させてしまうこともあります。 法律論だけでも建前論だけでもない、実務にそった内容のメルマガです。

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【著者】 特定社会保険労務士 小林一石 【発行周期】 ほぼ週刊

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