天然なのか、計算か。小泉進次郎環境相が政治家向きではない理由

reizei20191217
 

第4次安倍内閣で戦後男性最年少で環境相として入閣を果たし、その一挙手一投足に注目が集まる小泉進次郎氏。しかし先日行われたCOP25では、結果を残すどころか各国からの批判に対しても終始煮え切らない態度を取り続けたこともあり、政治家としてのイメージの低下が報じられてもいます。将来の首相候補の一人とも目される小泉氏は、どのような意図を持ち斯様な言動を取っているのでしょうか。米国在住の作家・冷泉彰彦さんがメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』でその分析を試み、「3つの可能性」を提示しています。

小泉進次郎大臣の言動は、計算なのか、天然ボケなのか?

スペインのマドリードで行われた国連の「気候変動枠組み条約」締約国会議(COP25)では、石炭火力発電を止めないばかりか、新規建設や外国への販売を進めている日本への批判が集中しました。

会議に参加した小泉進次郎環境大臣には、会議の前には「化石賞」、つまり化石燃料に依存している状況を皮肉った賞が贈られていますし、自分の演説では、「石炭政策について世界的な批判は認識」していると言いながらも、石炭政策に関しては「新たな展開を生むには至らなかった」と述べています。

ですから会議の成果としては散々であったわけです。会議が終わった時点では「交渉成立に向けて積極的に貢献し、日本のプレゼンス(存在感)が高まった」とか、「批判は日本への期待の裏返し」などという苦しい発言を繰り返していまた

その小泉大臣の姿勢については、「環境派のイメージダウンなどという報道がされています。表面的な印象としては、そうなるのかもしれませんが、では、仮にも「将来の総理候補」と言われる小泉大臣としては、どのような計算で動いているのでしょうか?

可能性の1は、「排出ガス削減」というタテマエと、「原発稼働はイヤなので、現実は石炭」というホンネの間を、ユラユラと行ったり来たりしているという見方です。つまり、世論には「もしかしたらこの人はやってくれるかも?」という期待を持たせつつ、政財界の中では「無理にタテマエに走って自爆するなよ」と釘を刺されている、そうした矛盾した姿を見せて、それなりの好感度を維持しながら行こうという作戦です。

安倍総理の原発政策がこれに似ています。この人の場合も与党としてのタテマエは「原発再稼働」で、「地元が了解してくれて進むのならそれはそれで結構」だとしながらも、世論のホンネである「再稼働もイヤ」という声を敵には回したくないので、奥さんは反原発だという二重イメージを振りまいたり、積極的に再稼働は言わないし、まして地元の反対の声に対して「矢面に立つことはしない」という「のらりくらり」をやっているわけです。

つまり、小泉大臣と安倍総理の「ノラクラ」を足すと、国外には「タテマエは脱炭素で行きたいけど、できません」という謝罪をやり、国内には「再稼働イヤでしょ。分かりますよ」という暗黙のメッセージを出し、更に政財界には「再稼働は地元が同意したら是非」と言いつつ、「再稼働推進の旗振りはやらない」ということで世論を敵に回さないようにする、そんなメカニズムの中で動いているという考え方です。

可能性の2番目は、三浦瑠麗さんなどが指摘しているのですが、小泉氏は「意図的に外圧を呼び込んでいる」という説です。つまり、国内的には「再稼働は絶対イヤ」で閉塞しているわけですが、そこに「海外からは脱炭素への方向転換を」という圧力が猛烈だという「外圧」を自分で受け止めるパフォーマンスをしながら、暗黙のうちに改革の方向性を落とし所に持っているという見立てです。

三浦さんらしい「面白い説」とも言えますが、問題は小泉大臣の父上が、「完全に脱原発」に行ってしまっているということです。そうなると、小泉ファミリーのイメージもあり、この人が、本当に「ある程度の再稼働を含めたエナジー・ミックス」に乗れるのかは分かりません。ですが、よく考えると、電源の構成を決めるのは経産省であって環境省には権限はないのですから、適当に「外圧を高めるだけ高めておいて」落とし所へ持っていくのは経産省に頼むという筋書きなのかもしれません。

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