次世代の行き方「精神充実の優先」がリアルになる日本

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2019年11月に内閣府が発表した最新GDPは、4期連続で増加だったものの伸び率自体は鈍化傾向を示しました。こうしたニュースが発表されると大抵の場合は景気悪化のネガティブニュースとして捉えられがちですが、メルマガ『j-fashion journal』の著者でファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんは、むしろ、今後の日本はGDPを上げずに充実感を得るスタイル、あるいは、そのような価値観に変貌していく、と見据えています。

効率追求から充足追求へ

1. 新しいテクノロジーに夢中

産業革命では、蒸気や電気により新しいパワーを得た。生産ではオートメーションにより効率化を達成した。現在、コンピュータ、インターネット、人工知能、センサー等により、人類は外部に新しい脳、神経、感覚器を獲得した。常に、人類は新しい能力を得ると、それに夢中になる。機械ができて、オートメーションができれば、調子の乗って、あらゆるものを大量に生産し、大量に消費した。資源を大量に使い、ゴミをまき散らした。その結果、地球環境は汚染し、人類の生存を脅かすに至った。

現在、我々は新しい能力に夢中だ。それで何ができるのか、あれこれ楽しんでいる最中である。この流れは、今後数十年は続くだろう。

2. 物質的豊かさからの転換

これまでの人類の目標は、物質的豊かさ、経済的豊かさだった。エネルギーと機械の活用によって、人類は物質的な豊かさを手にした。そのために人も企業も地域も国も活動してきたのである。しかし、このまま物質的豊かさをむさぼり続けることはできない。人類は目標を転換しなければならない。
さて、次の目標は何か。
これまで経験したことのない情報を、カメラやセンサーを通じて大量に入手し、人工知能やスーパーコンピュータで分析する。それにより、精神的あるいは霊的な幸せを獲得することが目標となるのではないか。個人も企業も地域も国も、目標を転換する。物質的な幸せにより、達成しようとした本当の幸せを手にするのだ。

3. 効率追求から充足追求

これまでは効率を追求してきたが、今後は充足の追求がテーマになるのではないか。そして、分業ではなく統業が手段になる。例えば、食料を入手する場合でも、自分で安全に栽培したものを食べた方が充足感は増す。むしろ効率は下がるかもしれないし、効率に興味がなくなるかもしれない。効率を下げることで充足が得られるのだ。

これまでは、住宅と職場と娯楽の場所は区分されていた。しかし、全ての機能を一つの場所で充足できるようになるのではないか。社会に出る必要もなく、積極的に引きこもることが評価されるだろう。日本は人口減少に悩んでいるが、その分、生活スペースを広く確保できる。自然も豊かだし、デジタルなインフラも完備している。自然と共に暮らしながらデジタルで仕事をする環境としては、世界有数だろう。

4. 幸福感指数、充足感指数

精神的な充足を与えるビジネスとは何か。というか、ビジネスではないのかもしれない。自給自足の活動も生存のためであり、共同体のための仕事も生存のために行うものだ。今後は、お金を目的としない仕事が増えていくだろう。お金ば幸せになるための手段だ。お金がなくても幸せになる活動があれば、お金に優先されるのは当然だ。

そして、今後はお金の必要性が次第になくなるのではないだろうか。そうなると、GDPの順位も意味が変わってくるだろう。GDPを上げずに充足することこそ、環境保護には必要だからだ。人間に最も必要なのは、幸福感であり、充足感だ。それが上がるのならば、人口が減少してもGDPが下がっても良いのではないか。もちろん、現在の段階で物質的豊かさや経済的豊かさを否定することはできない。しかし、徐々にその意味が変わってくるだろう。
時代の中にそんな予感がしている。

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■編集後記「締めの都々逸」

「お金なくても 心は満ちる 新たな幸せどんなもの」

確実に時代は変化しています。その予感はあるのですが、まだ、それが何なのか。具体的には分かりません。それでも2020年から時代は変わっていくと思うし、価値観そのものが逆転するのではないか、という予感がしています。

これまでの強みが弱みになり、弱みが強みになる。それが何なのか。どのように生きていけば幸せになるのか。興味は尽きないし、考えるべきことも多いようです。(坂口昌章)

image by:Shutterstock

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