また韓国の失敗。脱北希望漁師を北に戻す冷徹政治に非難殺到

文大統領②
 

今年11月、北朝鮮の漁船員2名が亡命を希望したものの韓国政府が認めず、北朝鮮に戻したという事件がありました。昔から故郷の秋田県で北朝鮮の漂流船を見てきたという、北朝鮮研究の第一人者、宮塚利雄さんは、自身のメルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』の中で、今回の韓国政府の対応を人道的観点から批判しています。

北朝鮮漁船員の追放は政治決定。文在寅が隠す3つの謎

私の故郷の秋田県の県紙『秋田魁新報』に、「木造船、漂着やまず」「本県海岸11月から急増」の記事が出ていた。さらに「本県沖合ハタハタ漁漁獲枠積み増し」「群れいるなら取りたい」の記事もあった。

故郷の由利本荘市は、昔から北朝鮮や中国などの外国の船が漂着する所となっているが、11月20日号には「今月17日、由利本荘市と秋田市の海岸に木造船3隻が漂着しているのが見つかった。このうち、由利本荘市松ヶ崎の砂浜で見つかった木造船は幅約3メートル、高さ約2.5メートル。甲板から船底に下りられる穴が複数開いた簡素な造りで、これまでに漂着した北朝鮮籍と見られる漁船と形状が似ている」と報じ、松ヶ崎に漂着した木造船のカラー写真も掲載された。が、見るからに「こんな船がなんで秋田県沖に漂着するのか」と思われてしまうほどの“ぼろ船”だった。

海上保安庁も「冬場の日本海は大しけが多く、漁に出た船が遭難して日本にたどり着くケースが多い」と推測。大陸側から吹き付ける季節風も日本への漂着の一因とみている、とも報じている。

今年1月号の『朝鮮画報』に、金正恩委員長大量のハタハタが水揚げされている様子に「大変満足している」とのコメントが入った写真数枚が掲載されているが、ハタハタは「海が荒れる時に獲れる魚」であり、ハタハタは「波多波多」とも書き、「鰰」や「?」の漢字も用いられる魚である。金正恩がハタハタをどんどん獲れ、と号令すればするほど漁に出かけざるを得ない漁師の負担(犠牲)は増すのである。

そんなおり、韓国の文在寅政権は「脱北を希望した北朝鮮漁船員2人を強制送還」という事態を招いた。私が韓国で資料調査をした結果では、この事件について文在寅政権がしでかしたことは「韓国が行った初の北韓人権侵害事例」と言われる事態であった。この事件は日本ではあまり話題にならなかったものの、韓国では追放した北朝鮮漁船員に対する処分決定は、「法治的」ではなく「政治決定」だったと言われている

今回の追放は、大韓民国憲法はもちろん、「北韓離脱住民保護及び定着支援に関する法律(北韓離脱住民法)」、最高裁判所の判例などのすべての法制度に反する違法行為だ(韓国の法律は、彼らの送還を認めるいかなる規定もない)との声が高まっている。

もっとも、肝心の文在寅政権は国連の対北人権決議共同提案国への参加を11年ぶりに見送るなど、北朝鮮の人権問題には目をつぶっており、「人権派弁護士出身の文在寅」に対する評価についての韓国民の評価も相反している。この2人の漁船員(軍人ではないかとの指摘もあるが)追放劇については様々な疑問が持ち上がっている。

第1に、漁民2人の南下を事前に軍が掌握していたという説である。鄭景斗国防長官は11月7日の国会で、犯罪被疑者らが漁船に乗って南下することを知っていたという趣旨の発言をし、2人の南下に備えて海上警備を強化したというが、どのように情報を収集し、そして収集した情報はどのような内容だったのか、ということ。

さらに、北朝鮮の漁船に対して2日間の追撃船があったという軍の主張も理解できない。最新鋭の韓国海軍の艦艇が、日本海岸に漂着するような古びた進行速度の遅い北朝鮮の木造船を追いかけ回したというようなこと自体が理解できないのである。最近の日韓関係が悪化する一因となった韓国側によるレーザー発射事件も、発端は韓国軍による北朝鮮漁船の捕獲騒動にあった。

第2に、大韓民国への亡命の意思を示した漁民2人への審議であった。統一部長官は国会で、北朝鮮漁民2人が合同尋問の過程で「死んでも北朝鮮に帰ると語った」、と証言した。要するに「韓国に亡命する意思はなかった」ということにしたのだが、この2人の漁民が北朝鮮に送還されたら彼らを待っている運命がどのようなものであるかを、韓国政府は知っているはずだが。

第3に、この漁民2人は本当に殺人者だったのかということである。「小さな漁船の中で3人(北朝鮮の金策港で逮捕された者を含む)が16人を殺害することが果たして可能だったのか」ということである。まったく謎めいた話であるが、2人の漁民の尋問映像と採証記録を公開すれば謎は解明されるのだが、自らの失策には頑として応じない(認めない)韓国のやり方は日本人にはよく分かっていることだが。(宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄)

image by:青瓦台 Facebook

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元山梨学院大学教授の宮塚利雄が、甲府に立ち上げた宮塚コリア研究所から送るメールマガジンです。北朝鮮情勢を中心にアジア全般を含めた情勢分析を独特の切り口で披露します。また朝鮮半島と日本の関わりや話題についてもゼミ、そして雑感もふくめ展開していきます。テレビなどのメディアでは決して話せないマル秘情報もお届けします。長年の研究対象である焼肉やパチンコだけではなく、ディープな在日朝鮮・韓国社会についての見識や朝鮮総連と民団のイロハなどについても語ります。

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