ゴーンだけが悪人か? 改めて問う「日産事件」最も重要な事柄

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カルロス・ゴーン被告の逃亡劇を巡り、メディアには保釈を認めた裁判所に対する批判的な報道が溢れています。しかし、事ここに至ってはゴーン被告の言い分などどうでもいいとするのは、米国在住の作家・冷泉彰彦さん。冷泉さんは自身のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』で、そう判断する理由と、産業の空洞化を加速させぬためにも当案件において最優先に考えるべき問題を記しています。

ゴーン逃亡、問題は日産の今後

アメリカでは「ゴーン逃亡」については、一旦は大きく報道されたのですが、イラン問題の報道で、完全に上書きされてしまった感じです。そもそも、ニュースとしてのスケールが違うと思います。

ゴーン問題に関しては、当初から私の考えは変わっていません。その点も含め、今回の逃亡劇について整理して掲げておきます。

1.ゴーンの過大報酬はハッキリ申し上げて「アコギ」です。そうではあるのですが、過大だとしても、それは日産=ルノー連合のボスとして、株主の理解を得るかどうかという問題です。つまり、基本は民事事件に過ぎません。検察が介入することのバカバカしさは、ライブドア事件と構造は一緒です。

2.有価証券報告書に虚偽記載をしたのは、確かに悪質ですが、これも担当役員レベルの問題です。あるいは取締役会の問題でゴーンが全部悪いという話はとても奇妙です。これだけの規模の企業グループで、そこまでガバナンスが効いていないというのは、とても不自然と言えます。少なくとも、司法取引して無罪放免になった面々も、真実を告げる義務はあるはずです。

3.資金流用による背任容疑も同様です。ゴーンの独走と強権で会社の資金が奪われたのではなく、組織的にそのような資金の流れが作られたということだと思います。例えばゴーンへの報酬パッケージを超えてカネを持ち逃げしたのならともかく、そうでなければ、この問題も刑事立件というのは不思議です。

4.問題は、安倍政権が国策捜査として「ゴーン追放」へ走ったとして、その動機です。一つの仮説は、「自動運転とEV革命に対抗するため」に、ゴーンが権限の集中を強化して、ルノー・日産を統合しつつ「無国籍化」することに、マクロンも安倍首相も拒否反応を示して共闘したという可能性です。つまり、日本としては日産を日本の会社に、フランスとしてはルノーをフランスの会社にしておきたいという強い動機があったという考えで、ゴーンは邪魔になったという考え方です。もう一つの可能性は、西川(前社長)などが「自分も背任になる恐怖に耐えられなくなってタレコミ」をした、検察もそれを無視できなかったというハプニングでしょうか。この点に関しては、ゴーンに自由に喋らせた方が真相に迫れる可能性はあるわけです。

5.仮に、日産を日本の民族資本としつつ、国際競争に勝ち残っていくのが究極の目的であるのなら、もっとスピード感を伴う形で、「強力なリーダーシップの確立」「ルノーとの分離」「大胆な買収によるグループの強大化」を行う必要があります。そこで遅れれば、シリコンバレーや、他のグループに飲み込まれてしまいます。そうなのですが、現時点ではそのような経営判断を行う司令塔があるとは思えず、このままジリ貧となる危険性を強く感じます。

6.一方で、日産の強みは北米市場であり、基本的に北米を失えば日産は消滅します。逮捕・保釈されたグレッグ・ケリーあたりが工作して、北米日産が別の勢力に乗っ取られるようだと、日本の自動車産業は一気に縮小する懸念があります。もっとも、既に現地での研究開発+生産+マーケティングに移行している北米日産は、既に日本のGDP寄与は極めて限定的となっているのは事実ですが。

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