トランプの自業自得。イラン司令官殺害が招く米の世界からの孤立

 

戦略的でないトランプ

ところがトランプになって、アメリカの動きは戦略的でなくなりました。彼も、「中国が最大の敵」であることを、もちろん知っています。であるならば、日本、欧州とはもちろん、ロシア、イランなどとも和解して、中国を孤立させなければならない。

ところが、実際彼は、日本と貿易戦争をする。欧州とは、NATO軍事費問題、ガスパイプライン問題、貿易問題などで、ことごとく対立し、仲が険悪になっている。トランプは、プーチンが異常に好きで、親ロシアですが、議会の反対が強く和解できない。イランについては、2018年、一方的に核合意から離脱し、今の状況を作り出してしまいました。

トランプ政権は、日米、米欧、米ロ、米イラン関係が悪い。結果、中国、ロシア、イランは、事実上の同盟関係」になってしまいました。

イラン、中国、ロシアが海軍合同演習開始 対米緊張高まる中

2019年12/27(金)23:13配信

 

【AFP=時事】(写真追加)イラン、中国、ロシアの3か国は27日、インド洋とオマーン湾(Gulf of Oman)で、4日間の海軍合同演習を開始した。イラン海軍の司令官が発表した。今回の演習は、2015年のイラン核合意から米国が昨年5月に離脱して以降、緊張が高まる中で実施された。イランのゴラムレザ・タハニ(Gholamreza Tahani)海軍少将は国営テレビに対し「この演習の意図は、協力と連帯を通じた平和、友好、そして持続的な安全保障」であり、「その成果として、イランを孤立させることはできないということが示されるだろう」と述べた。

さらに、フランスのマクロンさんは、「アメリカの脅威から欧州を守るために、真のEU軍をつくる必要がある!」などと宣言している。ドイツメルケルさんは、ロシアからのガスパイプライン「ノルドストリーム2」問題でアメリカと対立。妥協しない姿勢を貫いています。つまり、本来アメリカの同盟勢力であるはずの欧州は、全然アメリカの味方ではない。そして、これはトランプさんの自業自得なのです。日本も、アメリカを裏切って中国に走っています。

大戦略から見たソレイマニ司令官殺害

大戦略的に見ると、ソレイマニ殺害は、まことに馬鹿げています。中国と戦争中なのですから、イランと和解してこちらに引き込んだ方がいい。というわけで、イランとの戦争を誘発するソレイマニ殺害は、実に愚かな行動だったといえるでしょう。

どうすればいいかというと、イラン核合意に戻って、「イランは、IAEAの監視下で、核兵器を開発できない状況にする」「そのかわり、イランは原油輸出できるようになる」ですべては丸く収まります。

こんな「戦略的でない」トランプさんですが、民主党候補より「だいぶマシ」でもある。アメリカも人材不足が深刻です。

image by: saeediex / Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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