日本人は寝不足。婦人服OEM企業がパジャマ市場に打って出た勝算

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日本人のほとんどが睡眠不足とも言われる中、「睡眠の質」を上げる商品が話題となっています。今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』でMBAホルダーの青山烈士さんが紹介しているのは、OEM企業がBtoCビジネスに参入し成功した例としても注目を集める、「一般医療機器」として認可されているパジャマ。その戦略と戦術を青山さんが詳細に分析しています。

行動の速さ

今号は、睡眠にこだわった人気のリカバリーウェアを分析します。

● HLコーポレーション(小島衣料グループ)が展開しているスリープテックウェアブランド「liflance(リフランス)」

戦略ショートストーリー

睡眠の質に関心のある方をターゲットに「縫製の技術」や「特殊な繊維」に支えられた「着心地がいい」「ぐっすりと眠れる」「一般医療機器だから安心」等の強みで差別化しています。

一般医療機器として販売することが、睡眠に悩みを抱える顧客の安心感につながり、効果を体感した顧客の口コミの拡散に結びついています。

■分析のポイント

昭和27年創業の婦人服OEM企業である小島衣料にとって、スリープ(睡眠)テックウェアは新事業であり、初のBtoCビジネス、Eコマースへの参入となります。

多くの企業が、新たな売上の柱となるような新事業の立ち上げを考えていますが、やはり、柱を作るには土台が重要です。その土台とは何かというと、競合他社に真似できない核となる能力です。この能力がないようでは柱にすることは困難でしょう。

小島衣料の場合は、いままで大手アパレル向けで培ってきた縫製の技術がこれに該当します。この縫製の技術があるからこそ、競争が激しさを増しているリカバリーウェア業界において「着心地の良さ」を強みに戦えているわけですね。

そして、新規事業を立ち上げる上で重要なポイントとなるのが新規市場に参入する商品の見極めです。小島衣料の場合、まずパジャマを選びました。なぜ、パジャマかというと流行に左右されないことが理由のひとつだったようです。流行に左右されなければ、売れ残るリスクも低減できるということですね。

もちろん、そういった理由もあるでしょうが、パジャマを選んだことによって、既存のリカバリーウェアとの差別化にもつながったと思います。パジャマだったからこそ、東急ハンズの睡眠専門コーナー売り場にフィットして、人気商品になったわけですからね。

また、小島衣料の石黒社長のすばらしいところは、プラウシオンをコーティングした生地と出会ってからすぐにパジャマというアイデアに結びつけ、すぐさま試作品を作って自分で身につけて寝てみるという行動の速さです。この行動の速さが結果としてスリープ(睡眠)テックウェア市場にて存在感を発揮することにつながっていると思います。

ちなみに、寝てみた結果、不眠に悩まされていた石黒社長が「社長になってから始めて熟睡できた」そうです。社長自ら効果を実感したものですから、自信を持って市場に投入できたのでしょう。ストレスフルな社長でも、ぐっすり眠れるパジャマ、「社長専用パジャマ」として売り出しても面白いかもしれませんね。

今後の小島衣料グループ、ひいては「liflance(リフランス)」の展開に注目していきたいです。

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