2つ目は、そうは言っても何もかもを破壊してしまって、まっサラの状態から再出発すればいいとか、日本をゼロベースで再構築すれば良いというわけではないということです。また、このまま衰退に身を任せて、家族を形成するのを諦め、生活水準や平均寿命は徐々に切り詰めて行けばいいということでもないということです。
まず必要なのは、現在の日本で何が起きているのか、何が問題で、何を失いつつあるのかといった「現状把握」をすることです。全ての改革、全ての生存への作戦はそうした現状認識から始まると思います。
改めて5つの問題を指摘したいと思います。
1つは製造業から金融・ソフトといった主要産業のシフトに対応できなかったこと。また自動車から宇宙航空、オーディオ・ビジュアルからコンピュータ、スマホへと「産業の高付加価値化」にも失敗したこと。
2つ目は、トヨタやパナソニックなど日本発の多国籍企業が、高度な研究開発部門を国外流出させていること。つまり製造部門を出すだけでなく、中枢の部分を国外に出してしまい、国内には付加価値の低い分野が残っているだけという問題。
3つ目は、英語が通用しないことで多国籍企業のアジア本部のロケーションを、香港やシンガポールに奪われてしまい、なおかつそのことを恥じていないこと。
4つ目は、観光業という低付加価値産業をプラスアルファの経済ではなく、主要産業に位置づけるというミスをしていること。
5つ目は、主要産業のノウハウが、最も効果を発揮する最終消費者向けの完成品産業の分野での勝負に負けて、部品産業や、良くて政府・軍需や企業向け産業に転落していること。
この5つの結果として、日本型空洞化が日本経済を蝕んでいるのだと思います。1997年の人々が「このままでは2020年には世界のGDPの9.6%」というシェアまで落ちてしまう、そうなれば「日本が消える」と真剣に心配していたわけですが、実際の2020年になってみたら「9.6」どころか「5.9」という「地をはうような状況」になっているわけです。
日本型空洞化の研究、今年もこれは大きなテーマとして参りたいと思います。
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