【書評】なぜ、「裏」という言葉には負のイメージがついたのか?

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私たちが当たり前のように使っている日本語と、日々「格闘」している人たちがいます。文章の誤りなどを調べ指摘する「校閲」を仕事としている方々です。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』では編集長の柴田忠男さんが、朝日新聞校閲センターの皆さんによる、日本語の奥深さを知ることのできる一冊を紹介しています。

偏屈BOOK案内:朝日新聞校閲センター『いつも日本語で悩んでいます─日常語・新語・難語・使い方』

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朝日新聞校閲センター/さくら舎

朝日新聞朝刊の「ことばの広場─校閲センターから」に掲載されたものを書籍化した。見開き2ページで一つの言葉を取り上げていて読みやすい。言葉は知っていても、そこに使われる漢字の意味を考える機会が減った。漢字の一部は、すでに意味を置き去りにされた記号となりつつある、という指摘が実に正しい。

見出しもうまい。さすが、東京と大阪の本社校閲の手練れ約60名によるコラム、いい出来である。そのうちのいくつかを紹介したい。まず、朝日新聞本文の書体(フォント)は、「懐の広さ」に特徴がある。字の内側のスペースがゆったり広くなっていて、少し横長の扁平型である。小さな文字を少しでも大きく見せて読みやすくするための工夫だ。かつては金属製、いまはデジタルデータ。

でも朝日の「懐が広い」のは文字だけで、記事の内容はむしろ「了見が狭い」と思うんだけどな。「野球用語、日米の違い」は面白い。日本の野球用語には和製英語というべき言葉が多数ある。「ナイター」は和製英語であることはよく知られているが、米国でも俗語で使われている。夕方から夜にかけてのダブルヘッダーは、トワイライトとかけて「トワイナイター」と呼ぶそうだ。

「デッドボール」は米国では死球とは理解されない。プレー続行中ではない球や、飛びの悪い球を意味し、死球は「ヒットバイピッチ」と言う。「タッチアウト」「タッチアップ」は、米国ではそれぞれ「タッグアウト」「タッグアップ」という。「タッグ」は鬼ごっこ、鬼がつかまえる、の意味。「ゴロ」は日本語「ごろごろ」のように思えるが「グラウンダー」の音が転じた可能性もある。

最近の新幹線の駅名は長い。本州と北海道が新幹線で結ばれた2016年、北海道側に「木古内」「新函館北斗」、青森県側では「奥津軽いまべつ」の3駅が開業した。「新函館北斗」の命名は、朝日新聞によると、ルートの制約で駅舎が函館市中心部から16km離れた北斗市に建設されることから、市は「北斗函館」を希望、函館市は分かりやすい「新函館」を推した。合意に至らず現駅名になった。

これ以降、知名度向上や観光振興をめぐる地域の利害調整の結果、駅名は長くなったらしい。そういえば、山手線には「高輪ゲートウェイ」という珍名まで現れた。Yahoo!ニュースは、13.5字以内(半角英数字は0.5字)で見出しをつける。一目で内容が分かる最適な字数らしい。しかし閲覧数があまりに多いと、内容を勘違いされている恐れがあると捉えて、見出しを再考するそうだ。

わたしも大嫌いな「○○させていただく」の多用。「冗長で押しつけがましい」との批判が多い。この言葉は動詞にくっつけるだけで、場面を問わずに「相手に失礼のないようわたしは配慮している」ということを、あらかじめ示せるから重宝なのだ。市役所の会議に出ると、「いただく」症候群が蔓延している。

「裏」に負のイメージ?たしかに。差別的だと死語になった言葉に「裏日本」がある。日本列島の形状からの表現だったが、地域格差の象徴になってしまった。本来は物事の内側、心の中を表していたが、いまや裏社会、裏口入学など正式でないものを指すことが多く、好ましくないイメージが先行してしまった「かわいそうな言葉」なのかもしれない。重宝に使えるんだけどね。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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