県庁巡りで気づいた、お役所に必要な「やさしさ」の種類とは?

shutterstock_128036468
 

さまざまな福祉活動に関わるジャーナリストの引地達也さんは、その活動の中で感じた課題や、得られた気づきについて、自身のメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』で、伝えてくれます。今回は、各都県の教育委員会を訪ねる仕事の中で感じた庁舎の雰囲気の変化について記し、次の時代のキーワードを示します。

お役所の建物が語る日本社会の権威と「やさしさ」

年明けから関東・甲信越地区の各都県教育委員会をまわっている。多くが県庁(都庁)の中にあるからおのずと県庁訪問の日々となるが、各県それぞれ、地域の顔でもある県庁には威厳がある。

豪奢な建物、堅牢な造り、ゆったりとした車止からはじまり、広いエントランスに幅広い階段、とてつもなく高い吹き抜け。建物の規模もお金のかけ方も民間の会社では到底及ばない規模とスケールの建物は、税金で建てたみんなの公共財産である。税金を支払っている側からすれば立派であって当たり前だという人もいれば、何のための豪華なのかと疑問に思う人もおり、外観には賛否があるだろう。

私にとっての関心は、激変した「人当たり」だ。20年以上前の記者駆け出し時代に県庁の取材をしていて感じた、県庁内の部署内に入ると外部の人を煙たがる雰囲気はなくなっていて、私が案内板を見ていると「どちらに行かれますか」と聞いてくる「サービス」としての行政マインドが進化したのだと実感する。ただ、それは結構、県庁によって差はあるのだが。

県庁といえば基本的に石造りで回廊型の西洋風様式のイメージが強い。現在の財務省や日本銀行のように西洋の様式美を踏襲した門構えは、近代国家を目指す脱亜入欧の思想の名残のようなものだ。各県の権威の象徴でもある県庁も同様の建物が多かったが、改築や移転により昔の姿を残す県庁も少なくなってきた。

昔の名残を感じるのは今回訪問した中では神奈川県庁、埼玉県庁、山梨県庁であろうか。それらはすべて主要駅に近い場所にあるのも特徴で、市民からのアクセスは抜群。山梨県庁の甲府駅からの近さは全国一かもしれない。

ただ、庁舎中の窮屈さは職員が気の毒で、しかもペーパレス時代に紙が大好きなのもお役所のようで、旧い建物は現代の機能に対応できていないから、なおさらに窮屈になる。山梨県庁内ではいくつかの部署を回ったのだが、会議室や面談室がないから立ち話となり、私の横ではデスクに向かって全く違う仕事をする人がおり、さぞ迷惑だったのではないかと気の毒に思う。

print
いま読まれてます

  • 県庁巡りで気づいた、お役所に必要な「やさしさ」の種類とは?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け