tiakiはキャンペーンでもなければ、上から押し付けられるものでもない。NZという国に根付く、文化的価値観です。
住む人たちが「自分たちは自然の一部」と考えている。「自然の中で生かしてもらっている」という価値観が刷り込まれている。それを旅行者に荒らされたくない、いや、荒らしてはいけないのだ、という気持ちが、tiakiの5つのピストグラムを作った。NZの自然が人にもたらす有形無形の豊かさを守るためのメッセージが、tiaki promiseなのです。
実際、街にはゴミが全く落ちてないし、トイレもきれいです。使う人が明らかに「きれいに使おう」と意識している事がよくわかります(女子トイレは顕著に出るので)。また、ホテルの部屋などに無駄なものがない。アメニティのすべてがエコ素材で、プラスティックがどこにもない。レストランにも調味料がほとんど置かれていません。
米国のナチュラル志向とは全く異なるし、レジ袋を有料にするだのしないだのでもめてる日本が、恥ずかしくなる徹底ぶりです。
さらに、NZの人々にはtiakiの「敬意を払う」姿勢が行き届いていました。
日本人の「おもてなし」とは全く違うのです。「ああ、これが敬意を払うということなのかも」と、とても勉強になりました。
つまり「おもてなし」がある意味、サービスする側の自己犠牲に成り立っているのに対し、「敬意を払う」にはサービスを受ける側も相手をリスペクトする気持ちが必要です。決して「お客様は神様」じゃないのです。
最前は尽くすけどお互いの状況を理解しあう。「みんなそれぞれ立場があるし、みんな違う」という前提が、互いのいい距離感を生み出していました。
つまるところ、敬意とは、優しさであり、心に余裕をもってつながること。「不便だけど、こんなもんだよ。人生おもろいね」と笑えるしなやかさが敬意なのかもしれません。
NZでは2017年10月に、女性のジャシンダ・アーダーン首相が世界で最も若い38歳で誕生しましたが、それもまさに「敬意」が生み出したリアルなんじゃないでしょうか。
昨年、クライストチャーチのモスク2カ所で計50人が犠牲になった銃乱射事件後に、アーダーン首相はすぐに記者会見を開き、
「They are us.彼ら(殺されたムスリム達)はわたしたち(ニュージーランド国民)だ」と、思いやりや共感、愛を持って対応することを主張し、銃規制と被害者への経済的な支援も公言しました。
翌日には、ムスリムリーダーたちを訪問し、ムスリムの人たちの声に耳を傾け、彼らの心に寄り添いました。一人の人間として、悲劇直後の影響を受けた人々の心に寄り添い、被害者の家族を抱きしめるアーダーン首相の姿を世界中の人々が目にすることで、ムスリムへの差別を阻止したのです。
まさに、tiaki promise。政治パフォーマンスが横行する欧米諸国とは違う若きリーダーの志の強さを、tiakiが支えたのです。
今、この原稿は11日(火)の朝、オークランド空港のカフェで書いているのですが、出発便の掲示板には、まだ搭乗口が決まっていない(搭乗開始まで時間のある)フライトに「relax」と書かれている。
「さぁ、みんな。ひと息つこうぜ!だってこんなに自然は美しい!私たちは自然に生かされている!のんびり行こうぜ!」とメッセージがrelaxに込められている。なんという心地よさでしょうか。
日本に帰ってからも、“relax”を忘れないように…ですね。
みなさまのご意見もお聞かせください。
image by: Shutterstock.com
※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2020年2月12日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。