新型肺炎の裏で進む北朝鮮消滅。米のシナリオに乗せられた金正恩

 

ソレイマニ司令官暗殺の時期は、まだ中国が北朝鮮に大いに肩入れしている時期でしたので、中国からの強い後ろ盾を期待し、また米中間の終わらない対立を利用して、強気に出ようとし、ついにICBMの発射実験の可能性を匂わせていました。

その矢先、中国が新型コロナウイルスに襲われ、習近平国家主席の中国は、完全に新型コロナウイルスへの対応に追われることになります。ご存じの通り、その感染は広がる一方ですし、中国の経済活動を大幅に制限するような事態に陥っているため、中国としては、一切の“対外工作”を停止することになりました。もちろん、北朝鮮へのサポートも。

そしてそのような動きに呼応するかのように、北朝鮮側も新型コロナウイルスの北朝鮮国内での感染を防ぐべく、中朝国境を閉じ、空路も陸路も閉鎖しました。結果、国民は飢餓状態に陥り、暖冬の日本とは反対に、非常に厳しい寒さに直面している北朝鮮は、一気にマヒ状態に陥りました。ここにCOVID-19が国内に蔓延することになると、体制を根本から崩壊させることになりかねないため、ただただ苦境を耐え忍ぶしかない状況に追い込まれています。このまま放置していても、金体制の崩壊は時間の問題だと思われますが、そこに追い打ちをかけそうなのが、一度出してしまったカードである「ICBM発射実験再開の可能性」です。

先週号(「中国、韓国、北朝鮮が経済破綻。『新型肺炎』を仕掛けたのは誰か」)で、「もし、今回の新型コロナウイルスの蔓延が、アメリカが仕掛けた対中バイオテロだとしたら、それは中国経済のみならず、同時に北朝鮮と韓国をも一網打尽にしてしまう狙いがあるのではないか」とお話ししましたが、「ICBM発射実験再開の可能性」の言及は、北朝鮮にとっての破滅の可能性を高める結果になるかもしれません。

世界が新型コロナウイルスの蔓延の恐怖に気を取られている間に、トランプ大統領とその側近たちは、【ICBM発射時の迅速な対応】について着々と準備を進めていたようです。

15名ほどから入手した情報を総合すると、「金正恩氏の斬首・暗殺」(ソレイマニ・モデル)から、「小型の戦略核弾頭を搭載したピンポイントミサイル攻撃や地中貫通弾バンカーバスターを用いた攻撃」など、方法には幅がありますが、どれも北朝鮮の金体制の終焉と国家としての崩壊の可能性に言及する内容でした。

最近、トランプ大統領は側近に対し、「11月3日の大統領選が終わるまでは、金正恩氏のとの首脳会談に応じるつもりはない」旨、伝えました。同時に、実務者協議についても、具体的な成果、つまり北朝鮮の非核化の完全実施とその確証が得られない限りは、実施に応じないとの指示を出したようです。

それは、【11月3日以前に対北朝鮮制裁を解いたり緩和したりすることはない】との方針と考えられます。

新型コロナウイルスの蔓延により、中国の後ろ盾を失い、新型コロナウイルスを恐れるあまり経済活動をマヒさせ、食糧難を引き起こした北朝鮮の金正恩氏の“生命線”は何か。

「核兵器を持つ限りは、自らは殺されない」という過信です。かつてのリビアのカダフィー氏が核廃棄に応じたがゆえに、後日惨殺されたことと、今年初めのソレイマニ司令官の暗殺を受けて、これまでよりも「核兵器の開発とICBMの配備」に自らの生き残りを託しているとしたら…。

見事にトランプ大統領が描いた【北朝鮮崩壊のシナリオ】に乗せられて、半ば暴発するかのようにICBMの発射実験や核開発への回帰を持ち出し、瀬戸際外交に打って出るかもしれません。

そうなると「アメリカおよび国民に対する差し迫った国家安全保障上の危機に備えるため、北朝鮮を攻撃せざるを得なくなった」と、この大統領選イヤーに北朝鮮攻撃に舵を切るかもしれません。何しろ、これまでのアメリカ大統領選挙の年に支持率向上のために最も用いられた手段が、【国家安全保障のための戦争開始】だと言われているのですから。

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