ストレスがいじめに向かう。保身のみで自己愛すら欠如の日本社会

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大きないじめ事件が起こる度に世間が騒ぎ立てはするが、やがて風化の繰り返し…。なぜ、日本の学校からいじめがなくならないのでしょうか。今回の無料メルマガ『いじめから子どもを守ろう!ネットワーク』では、元小学校校長で子ども未来プロジェクト代表の泉章子さんが、アフリカのベナン共和国の孤児院で出会った少女の言葉の根幹に生きている、「日本が経済成長の影で置き去りにしたある感情」を紹介しています。

勇気をもって、小さな一歩を踏み出せ

いじめについて、考える時に、いつも心の中に浮かんでくることがある。

「どうしていじめが起こるのか」と。

本当は、誰かがいじめられるのを見たら、誰でも心が痛むと思う。「かばってあげたい」と思いながらも、次は自分がいじめられるんじゃないかと不安になる。そして、傍観者になってしまう。他人を大切にできない時は、実は、自分を大切にできていない時だ。自分の気持ちを出したいのに、出せない。もどかしさを感じているのだ。

一方、いじめている人は、人をいじめることで自分の心のバランスを取っている。

しかし、どうだ。いじめられた人は、心が壊れ、人生の表舞台に戻れない。長い苦しみが襲う。

いじめているあなた、あなたは不安や癒せない心で苦しんでいるかもしれない。でも、目を背けないで、いじめられ、傷つき、さらされている人の心を見てほしい。感じてほしい。人をいじめても、苦しさからはのがれられないんだ。

日本のいじめの現状を見る時に思い出すことがある。

私は2017年6月に西アフリカのベナン共和国に行った。ベナンで訪れた孤児院での話。日本人の方が定期的に訪れ、教科書や蚊帳を寄付してもらっている、と聞いた。学校で教科書を見て授業が受けられるようになった喜び。蚊帳のおかげで、マラリヤや蛇の恐怖から救われたことへの感謝。だから、日本人の私をとても歓迎して迎えてくれた。

そこで、ある19歳の少女と出会った。少女は、勉強ができる喜びにあふれていた。本を寄付してもらい、読書感想文のコンクールで選ばれたと語っていた。読書感想文を読ませてもらった。涙が止まらない。この19歳の少女の語る言葉に心震える私がいた。

私はずっと人を信じられなくて、いつも一人だった。だけど、ある日本人の方に出会い、人を信じることができるようになった。アフリカの問題は、戦争や飢餓ではない。アフリカの問題は、愛の欠如だ。

そう彼女は書いていた。「私は愛によって救われた」と言っていた。

その日本人の訪問は、凍っていた彼女の心を溶かしひらいていったのである。

いじめの問題も、その根底にあるのは、愛の欠如である。愛されたことがある人は、自分も愛せるし、他人も愛す。自分を愛している人は、自分に自信が持てる。自分を大切にする。自分を大切にする人は他の人も大切にできる。いじめなど起こらない。

日本は高度成長期を経て変わったように思う。世の中の進化は、人々の思いを良い方にも悪い方にも変えていった。素晴らしい日本の躍進は、プラスの方向。ただ、崩れてしまったものもある。例えば、父母への尊敬の念、学校の先生に対する尊敬の念。世界にたった一人しかいない自分自身を大切にすること。日本人らしささえも。

しかし、大切なことが、全てなくなってしまったというつもりはない。見えなくなってしまっているだけ。実は、あなたの目の前に今もある。何かに追われる生活から、何かを生み出す生活に戻す時が来た。何かができて、人は素晴らしいのではなく、人は生きていることだけで素晴らしい。

あなたが、あなたであることを大切にし、あなたにしかできない何かを大切に育み、あなた自身の個性を輝かせることが、新しい始まりとなるだろう。

生命(いのち)を与えられたことに感謝し、自分を信じ、自分を愛して生きていく。自ら小さな一歩を踏み出す。私も今、踏み出したところである。

泉章子の子ども未来プロジェクト代表 泉章子(いずみしょうこ 元小学校校長)

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