危機管理の専門家が再び主張。安倍首相の休校要請が正しい理由

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マスメディアが形成する「世論」の影響もあってか、安倍首相が打ち出した「休校要請」への批判が止みません。そしてその批判に異を唱え続けるのが危機管理の専門家で軍事アナリストの小川和久さんです。小川さんは、自身が主宰するメルマガ『NEWSを疑え!』で、新型ウイルスの蔓延は奇襲攻撃を受けている状態であるとの持論を展開。まずは考えられる対策を「独断」との批判に怯むことなく打ち出し続け、後回しにされた部分、適切でないとわかった部分は速やかに修正すれば良いと訴えます。

独断、場当たり、唐突は奇襲対処では当たり前

新型肺炎(新型コロナウイルス感染症)への安倍政権の対応について、いまだに「独断だ」「場当たりだ」「唐突だ」と批判する声が挙がっています。

「『場当たり的、唐突。不安広がる』愛媛知事が首相の休校要請に苦言新型コロナ」(2月28日付毎日新聞)

「首相独断、官邸に亀裂一斉休校要請菅氏らに不信?決定から除外」(2月29日付西日本新聞)

「首相『独断』に与党不満新型コロナ対応、根回し足りず」(3月6日付朝日新聞)

外交・安全保障・危機管理を専門とする私の立場からすれば、この日本の「世論」の有り様は、満足に国民の命を守ることができない日本の姿を、浮き彫りにしていると言わざるを得ません。このところ、編集後記で同じことを繰り返しているのですが、今回は「危機管理は本来、拙速、場当たり、唐突になるのが当たり前の姿」だと強調しておきたいと思います。よい結果に結びつけられるかどうか、その一点で評価は決まるのです。

戦争、大規模災害、感染症を問わず、国民の生命が危機に直面しているとき、必要な措置を臨機応変で実行していこうとすれば、場合によっては首相の独断になるのは避けられません。多くの場合、場当たり的に見える動きにならざるを得ませんし、唐突な印象も拭いがたいかも知れません。

しかし、考えていただきたい。何度も申し上げていることですが、奇襲攻撃を受けている中では、必要と思われる手はなんでも打ち、混乱の中から反撃に転じなければならないのです。体系的な、論理的な、法制度に基づいた…などと言っていたら、国民は死に、国は滅びるのです。

専門家を集めた会議が、必要なタイミングで明確な方針を打ち出すことができれば、なにも首相が前面に出てくる必要はないのです。専門家や官僚機構には何も決めることができず、一方で危機がどんどん進行しているとあれば、首相としては独断と批判されようとも、方針を打ち出さざるを得ないのです。臨機応変ということは場当たり的な動きの連続にもなります。いきなり新たな動きをするのですから、唐突な印象も生まれてくるでしょう。言ってみれば、独断も、場当たりも、唐突も、危機管理としては当然の行動の結果でもあるのです。

そうした、場合によっては法制度を逸脱した行動が生じたとしても、危機管理の目的を達成すると同時に、生じた問題を可及的速やかに健全化させることができて初めて、成熟した民主主義国家と言えるのだと思います。その意味で、与野党を挙げて国会が機能するかどうかが問われているのです。

安倍政権としては、ここは古代中国の戦略の書『孫子』が記しているように、最優先すべき国民の安全のために、批判に怯むことなく拙速に対策を打ち出して欲しいものです。そして、後回しにされた部分、適切でないことがわかった部分は、これも速やかに撤回や修正を施して欲しいと思います。

私が新型肺炎の感染拡大を「有事」だと言ったら、「戦争と感染症は違う」という批判がありましたが、新型肺炎の現状は日本列島が武力侵攻されている事態よりもなお、国民が直接的な脅威にさらされている点で深刻なのです。批判する人たちは、自分たちが独断、場当たり、唐突と理屈をこねていられるのは、危機感が薄い証拠だと、自らを見つめ直して欲しい。

西村康稔さんが担当大臣を兼務することになりましたが、危機管理の要諦が拙速にあることに思いをいたし、一刻も早く終息にこぎ着けてもらいたいと思います。(小川和久)

image by: 首相官邸

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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【著者】 小川和久 【月額】 初月無料!月額999円(税込) 【発行周期】 毎週 月・木曜日発行予定

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