現役探偵が糾弾。いじめ自殺事件の加害者を守る商船高専の実態

 

その前に起きた「いじめ自殺事件」

B君は、日本を支える海運の仕事につきたいと明確な目標を持って大島商船高専に入学した。

B君の記録を見ると、本が好きでよく読書をしていることがわかる。母親想いの優しい子であり、正義感が強く、正直に物事をはっきり言う性格であることがわかる。

ご遺族提供:B君の履いていた靴

ご遺族提供:B君の履いていた靴

中学生で航海士になりたいという明確な夢を持ち、母子家庭であった親を助けたいという気持ちが強くある。

しかし、入学から間も無く、B君は嘔吐する。

原因は不明であるが、すでに仲間外れにされていたという証言がある。

嘔吐後、「汚い」「臭い」と言われ、荷物や鞄を放置されるなど周囲からみてもいじめの対象になっていることは明らかであった。

部活においては、先輩と同級生がB君をからかい、怒らせて、その様子を「殺人鬼」だと、嫌がる本人を無視して、あだ名をつけられていた。

友人らに話を聞いていると、B君をいじめていた4人の名前がよく出てきていた。

Cは、いじめ自殺未遂事件の首謀者でもあり、クラスや科では中心人物である。Cには取り巻きがおり、この取り巻きも一緒になっていじめに参加していた。

もう1人のDは、とにかくB君を嫌っていたから、何かにつけてB君に因縁をつけていた。Dは元々は寮の同部屋であり(入寮後すぐ)部屋にラインを引き、B君にここから先は入るなと命令したり、入ってしまった場合は強く叱責していたという。

LINEなどでやりとりが多く確認できるEは、B君をバカにしたり、悪口を言いふらし、クライスメイトらと交流しようとするB君から周囲を引き離していた。このEは、いちいちB君に絡み、絶え間なく執拗にいじめ行為をしていた様子を多くの生徒が見ていた。

特にLINEは酷く、スタンプ爆弾と呼ばれる数分から十数分の間に100件以上のスタンプを送るなどの嫌がらせをしていた。

また、Fは「いじめるのが好き」だと公言し、B君のみならず、いじめ自殺未遂事件の被害者もターゲットにして、その様子を写真に撮ったりしてネタにしていた。

つまり、嘔吐は、別段の胃腸の問題がないことから心因性のものであると考えられ、学校でも寮でも部活でもいじめの対象となり、強いストレスがかかっていたと考えるのが妥当だろう。

ご遺族の記録によれば、4月5日に入学し併設された寮に入寮。4月18日は学校で大量に嘔吐し、一旦帰省しているが、「爆睡」していたとある。多重ストレスからの解放後、多くのケースで、強い睡眠を取ることが確認されていることから考えても、入学と同時にいじめが始まり、短期間の間で、その後の5年間の学校生活に絶望するような出来事が次々と起こっていたと考えられる。

しかし、事件は自殺前日に起きた。

自殺前日

大島商船高専の寮では、入寮時は名前順などで部屋が割り振られる。その後、好きなもの同士の申告制で部屋替えがあるのだ。

B君といじめ自殺未遂事件の被害者は、当然のように周囲からいじめの対象となっていたから、同部屋ということになった。

ただそれは、部屋にいる間は平穏であることも意味していたに違いない。

ところが、Cらいじめの中心人物らは突如部屋に入り込み、肩パン(肩をパンチで殴りつける)などをしてきたり、誰かの物がなくなったと言いがかりをつけ、部屋を荒らして帰るなどしていて、落ち着いて過ごせるということはなかった。

4月中旬ごろから、B君はリストカットをするようになっていた(後日、死体検案により発見)。

さらに、事件が起きる。

5月20日、男子寮にはだいたいあるエロ本(アダルト雑誌)が、B君の引き出しから見つかった。

これを 仕掛けたのは、Cとその取り巻きである(子分のような立場)のGであった。

Cらは、B君がエロ本を持っていて、毎日自慰行為をしていると言いふらして騒いでいた。

その様子から、B君は自部屋に戻り、引き出しを確認した。当然、見たこともないエロ本が自分の引き出しにあったのだ。

部屋でも落ち着けない上、場合によっては処分の対象になりかねないエロ本を仕掛けられる。例えば、これがお酒であったりタバコであれば、退寮処分になるかもしれない。

いじめられている者にとって、これは「お前の身分などいつでもどうにもでできる」という脅迫以外の何者でもない。

B君は落胆と同時に激昂し、このエロ本を窓の外に投げ捨てたのだ。

ところが、このエロ本は別のクラスメイトの持ち物であった。

騒ぎに気がついた真の所有者H君は、盗まれたと思って、B君に詰め寄った。

「拾ってこい」

しかし、H君は周囲の様子がおかしいことに違和感を覚えた。B君は引き出しに入っていたと説明をした。そこで、一緒に拾いに行ったのだ。

H君はCが自分の部屋に入ってエロ本を盗み、これをB君の引き出しに入れて、その様子を見て楽しもうとしたことをその後確認している。当のCは、窓からこの様子を見て薄ら笑っていた。

その日の夜、B君は部屋を抜け出した。同部屋であったいじめ自殺未遂事件の被害者は、B君の目覚ましがなり起きている。トイレにでも行ったのかと思っていたが、なかなか部屋に戻らないことを心配して探し回っている。

学校は警備上、学校校舎は施錠しているとしているが、B君は施錠がない外階段から校舎に入ったようだ。

死体検案書によれば、死亡した時刻は21日0時30分ごろ、外階段4階の踊り場から手すりを乗り越え転落し、身体を強く打って死亡したとされている。

直接の死因は「外傷性くも膜下出血」であるから、しばらくは息があったと推測できる。

発見されたのは、朝の6時5分ごろ、出勤してきた教員が発見している。発見後、110番通報し、駆けつけた警察官が救急隊を呼んだが、すでに息がない状態であり、救急隊員により死亡が確認された。

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