四面楚歌のWHO。習近平への「謝罪要求」が世界中にあふれる日

 

新型コロナが米国で流行する前、アメリカではマスク、人工呼吸器、消毒液が猛烈な勢いで売れていた。中国人が故郷の親戚や知人に贈ったり、母国で転売していたのだ。武漢から燎原の火のごとく感染が広がっていた頃の話である。

中国を支援するため、日本からもマスクなどが送られた。武漢の病院の地獄絵のような映像は、世界の多くの国民の目にはまだ他人事に見えた。

そのころ北京政府は海外の中国人や、国営企業、民営企業に指令して、ありったけのマスクを買い占めさせ、防護服、医療用ゴーグルなどを世界中から買い集めていた。

気がつくと、中国における感染の勢いは下火となり、欧米諸国や日本で、医療物資やマスクの在庫が底をつきはじめていた。そして、新型コロナの流行はイタリアをはじめヨーロッパに飛び火し、やがてアメリカ本土にも上陸して猛威をふるった。

いかに習近平国家主席でも、ここまで見通すことはできなかっただろう。都市封鎖など強権をふるった隔離政策は中国ならではの成果をあげたが、自由世界に拡大させた“コロナ地獄”が、このような展開になろうとは。

中国は世界の製造工場から、いまやサプライチェーンを支配する存在になっている。マスク一つとってみても、中国の生産量はもともと世界の半分を占めていたが、新型コロナのパンデミックで、生産量は12倍に増加、1日あたり1億6,000万枚の生産をするまでになった。

世界のマスク需要は飛躍的に増え、中国産の奪い合いが起きている。経済活動をストップする各国は、中国からやってきた疫病に苦しみながら、骨髄にしみ通った恨みをひた隠しにして、中国に物資の供給を頼まざるを得なくなった。

コロナ後の世界はどうなるのだろう。今の勢いに乗って中国がアメリカを凌駕する国になれるのか、それとも、グローバル経済を支えてきた中国中心のサプライチェーンに疑問を抱いているだろう先進各国が、新たな製造の仕組みを構築し、中国の野望を打ち砕くのか。

アメリカでは3月18日、トム・コットン議員とマイク・ギャラハー議員が「中国からサプライチェーンを守る法案」を提出し、中国依存からの脱却を訴えた。

アメリカの製薬会社は、薬の原料生産の多くを中国の工場に委託している。例えば抗生物質などは、中間化学品の調達をほとんど中国で行っている。中国の化学産業のシェアは世界の40%を占め、医薬品サプライチェーンの中心的役割を担っているが、いったん今回のようなパンデミックが起き、医薬品の争奪戦が起こると、それが他国にとっては、国家安全保障上の重大なネックになるのである。

新型コロナの治療薬として承認が待たれる日本国産の新型インフルエンザ治療薬「アビガン」にしても、原料のマロン酸ジエチルは中国からの輸入だ。日本政府は脱中国をはかるため補助金を出し、国内化学メーカーによるマロン酸ジエチル生産を再開させて、アビガンの増産をはかっている。

なぜ中国にアメリカや日本など先進国が製造拠点を移したかは、いまさら説明するまでもあるまい。新自由主義的な競争のなかで、人件費など安いコストを求めてグローバル企業やその周辺の企業群が中国大陸というフロンティアをめざしたからであろう。

進出してきた外国の会社と合弁した中国企業は、強制的な技術移転などでノウハウをつかむと、米国など世界の市場に打って出て、ダンピング戦術で競争相手を潰し、市場を独占したうえで値段をつりあげるというパターンでのしあがってきた。中国政府は国内企業に莫大な補助金を出して価格の競争力を高め、他国の企業を蹴散らすのである。

トランプ大統領は、世界の覇権をねらう習近平政権の頭を抑え込むため、いわゆる“米中貿易戦争”を仕掛けたが、どういう因果か、昔なら中国・武漢の風土病ていどで終わるべき新型コロナウイルスに足元をすくわれた。

ヒト、カネ、モノが世界を駆けめぐるグローバル経済のもとで、あっという間に広がるこの難敵の前には、アメリカ自慢の最新鋭ハイテク兵器も何の役にも立たない。

print
いま読まれてます

  • 四面楚歌のWHO。習近平への「謝罪要求」が世界中にあふれる日
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け