支持率急落の安倍政権が抱える「河井夫妻Xデー」という時限爆弾

 

河合夫妻逮捕という爆弾

このような世論動向の下で、安倍首相が実は最も恐れているのは河井克行前法相・案里参議院議員の夫婦そろっての逮捕である。その何を恐れているのかと言えば、1億5,000万円という異常な額の軍資金が案里当選のために注ぎ込まれ、それが辺りを憚らぬ派手な買収工作の原資となったのだが、その少なくとも一部、もしくは大部分が、自民党本部からではなしに官邸の機密費から支出されたのではないかとの想定を、検察側が抱いていると言われていることである。

元々は岸田派の重鎮で自民党の参院幹事長、議員会長もつとめた溝手顕正の牙城だった広島選挙区に、河井の妻を第2の公認候補として強引に押し込んだのは、河井を可愛がってきた菅義偉官房長官だとされてきた。ところが実際には、菅だけでなく安倍首相も案里の擁立には大乗り気で、それは第1次安倍政権で防災担当大臣に登用した溝手が現職閣僚でありながらテレビで安倍首相を「もう終わった人でしょ」と酷評したことがあり、粘っこい性格の安倍首相はそれをずっと恨みに思い続けてきたためである。金だけではなしに、隣の山口県から「安倍晋三秘書」の名刺を持った運動員を多数投入して溝手支持者を虱潰しに回って案里に寝返らせる工作を展開した。

検察の中でも独特の硬骨の気風を持つと言われる広島地検は、当初からそこを狙い目の1つに定めて捜査を進め、すぐに事の重大性に気づいた稲田伸夫検事総長が大阪・東京地検からも応援の検事を送り込むなど応援態勢をとった。それが、安倍首相が稲田を下ろして、言うなりになる黒川を検事総長に据えようと焦った原因で、その行き着く先が検察庁法改定という理不尽だった。

常習賭けマージャンという想定外の要素まで加わって黒川の首が飛び、すっかり目算が狂った安倍首相と菅は、今は「検察庁法改正は取り下げて廃案にするから河井夫妻逮捕は勘弁して」と検察に取引を持ちかけていると言われている。そんなものに乗れば「何だ、稲田も黒川と同じ政権ベッタリなのか」と言われてしまうから、到底できない――はずなのだが、直感力の鋭い立川談四楼は毎日26日付夕刊でこんなことを喋っている。

賭けは明らかに違法だよね。今度こそ、安倍さんは任命責任から逃れられませんよ。「余人をもって代えがたい」って言っていたんですから。では、どうやって幕引きを図ったのかの小噺を。

 

「K川を切るからK井夫妻から手を引いてくれないか」

「いいよ。その代わり、もう我々の人事に手を突っ込まないでくれ」

「では手打ちということで」

「了解」

 

さて、誰と誰の会話でしょう。

上記の6~9月の日程解説ではわざと触れていなかったのだが、本当のところ、6月17日の会期明けに検察が河井夫妻逮捕に踏み切るかどうかが目下の最大焦点で、稲田検察が真っ直ぐにそこへと突き進めば安倍政権は倒壊する。しかし検察は決して「正義の味方」ではなく「権力の番犬」であって、政権と検察の間の闇は外からは窺い知れず深いので、必ずそうなるとは限らない。

image by: 河井あんり - Home | Facebook

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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