池田教授がせっせと育てても、朝の食卓にキュウリが並ばないワケ

 

キュウリはソラレンという紫外線を吸収する物質を含み、朝食べて外に出るとしみができやすいようで、女房はどこかでそのことを聞いたのだろう。以来、朝の食卓にはキュウリの漬物は並ばなくなった。ぬか漬けの野菜が好きな私としてはちょっと残念だ。私はすでにしみだらけで、食べても食べなくても、しみについては大して変わらないのだけれど、自分で用意するのが面倒なので、結局は食べないのだ。

キュウリには黄色い綺麗な花が咲き、ハナバチやスジグロチョウが吸蜜に訪れている。雌雄異花で、雄花は咲いてすぐに散ってしまう。雌花は蕾の時から将来キュウリの実になる部分がついている。とても不思議なことに雌花は受粉しなくとも結実して大きくなる。しかし受粉していないので種ができない。種ができない実を大きくしても、遺伝子の存続には何の役にも立たないのに、何でこんな無駄なことをするのだろう。キュウリは人間に食べられるためだけに、存在しているわけではないだろうにね。

ナスは私の好きな野菜の一つで、子供の頃はナスの味噌汁が好物だった。今は、焼くか、ぬか漬けにして食べる方がうまいと思う。ぬか床に鉄の塊を入れておくと色が変わらず、見た目が良い。心なしか、いい色に漬かったナスは美味しく感じられるが、本当に差があるのかどうかは知らない。

山梨大学に勤めていた時、研究室から直線で50mほどの所にあった食堂の目玉定食は「ナス定」という名前だった。10人も客が入れば、満席になってしまう小さな大衆食堂だったが、「甲府大飯店」という大層な名前が付いていた。台北の「圓山大飯店」を知っている人が見たら、腰を抜かすに違いない。大学教授みたいな雰囲気のオヤジが料理を作っていて、ナスが安い時にはナスばかり、高い時には少ししか入っていなかったけれど、一番安くてボリュームもあったので、金がない学生たちと、いつもナス定を食っていた。

今年植えたのは「たくさん中長ナス」と「とろとろ炒めナス」というサントリーから販売されている苗で、「たくさん中長ナス」は去年どんなに沢山生るのだろうと思ってワクワクして植えたところ、実にゼロ個の収穫だったので、今年も全く同じ品種でリベンジしようと思ったのだ。

それで今年もダメだったら、サントリーのウイスキーもビールも二度と飲まないと誓って始めたのだ。愛情をこめて育てたせいか、呪いをかけて育てたせいかは知らないが、今年は結構実が生って、サントリーのウイスキーは捨てないで済んだのである。「とろとろ炒めナス」の方はまだ実が付き始めたところで、収穫していないが、元気ですくすく育っているので期待している。(メルマガより一部抜粋)

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