池田教授がせっせと育てても、朝の食卓にキュウリが並ばないワケ

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新型コロナウイルスの感染拡大により外出自粛が続き、家で料理をするようになったという人が多くいます。そして、料理の食材を調達するために、家庭菜園に精を出す人も。CX系「ホンマでっか!?TV」でおなじみの池田教授も、家で過ごす時間が増えて、野菜づくりを楽しんでいる1人です。今回のメルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』では、栽培しているキュウリとナスにちなんだ豆知識や思い出の味について綴っています。緑のキュウリがかつては黄瓜と呼ばれていた理由を知っていますか?

老人閑居して野菜を作る

コロナ騒ぎが始まった頃は、講演も会合も皆、中止になってしまい、毎日、昆虫標本の整理をしていたが、少しは外に出ないといけないかな、と思って、庭で畑仕事をすることにして、キュウリ、ナス、トマト等の苗を買って庭に植えた。

畑を耕し、新しい野菜の培養土を入れ、元肥を投入し、苗を植えて水やりをして、花が咲いて実が付くのを楽しみに、毎日雑草抜きをしたり、トマトの芽欠きをしたり、キュウリ用のネットを張ったりしていた。品種改良した野菜は、人間の好みに合わせて無理に作ってあるものだから、病害虫に弱く、面倒をみないとあっという間に、うどん粉病になったり、アブラムシが付いたり、ウイルスにやられたりする。

キュウリはインド北部が原産地で、ナスはインド東部が原産地らしい。日本に渡来したのは古く、奈良時代から平安時代だと言われている。1200年以上も前である。江戸時代まではキュウリは熟したものを食べるのが普通だったようだ。熟したものは黄色くなり、黄色の瓜ということで黄瓜と呼ばれた。当時の文人たちには評判が悪かったようで、徳川光圀や貝原益軒は小毒があって体に悪いと酷評している。江戸時代の末期に、未熟なうちに食べれば、瑞々しく歯ごたえが良い品種ができて、一気に人気野菜になった。

自宅の庭で作っているのは四葉キュウリ(スウヨウキュウリ)とミニキュウリだ。四葉キュウリは太平洋戦争末期に朝鮮(当時は日本が占領していた)から入ってきたもので、元は華北で栽培されていたものだ。イボイボと皺が特徴で、長くなる品種(食べごろが25~30cm)で、折れないで出荷するのが大変らしく、スーパーにはあまり売っていないが、家庭菜園では人気品種らしく、園芸店では沢山の苗を売っている。食べ応えがあって食感も良く漬物には向いていると思う。30cmにも育ったキュウリを収穫する時の満足感が何とも言えない。

ミニキュウリの多くは近年になって大手の野菜メーカーで作られたもので、沢山の品種がある。次々と実が生って一日に何本も収穫でき、これはこれで楽しい。獲れたてのキュウリにみそを付けて、昼間からビールを飲むのは、隠居爺に許された快楽である。勤めているとそうはいかない。すまじきものは宮仕え、ってね。まともに宮仕えしたことがないので、偉そうなことは言えないけどね。

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