世界的プログラマーが日本社会に警鐘「このままだと8割が負け組」

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これまでの私たちの働き方を一変させた、新型コロナウイルスの流行。それまで遅々として進まずにいたリモートワークも、相当数の企業で導入されるに至りました。この潮流はコロナ後も続くのでしょうか。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では著者で世界的エンジニアの中島聡さんが、コロナ後に起こる労働と社会階層の変化を予測。さらに日本が今のまま変わることがなければ、「8割が負け組」という社会が到来すると警告しています。

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

コロナ後の世界:社会階層

コロナ後の世界が実際にどうなるかを予測することは簡単ではありませんが、ロックダウンにより半ば強制的に始めることととなったリモートワークの結果、多くの企業がオンラインツールを使い始めたことにより、三つのことは確実に起こると思います。

一つ目は、「時代遅れな慣習の淘汰」です。多くのオフィスには、定例ミーティング、稟議書、判子、ファックス、付き合い残業など、何年も前から消えずに残っていた「不必要な慣習」がたくさんあります。リモートワークにより、その手のものがなくても十分に業務がこなせることが明確になり、業務の効率化が進みます。

同時に進むのは「職務の明確化」です(これが二つ目)。全員がオフィスで働いていれば、誰が何をすべきかを前もって明らかにしなくても、「団体責任」の名の元で、「忙しそうな人を手伝う」とか「一部の人たちが頑張ってしまう」などの方法で、なんとかなってしまいます。

しかし、リモートで働くとなれば、「誰が何をすべきか」を前もって明確にしておくこと、そしてそれぞれの仕事の進捗状況を把握することがより重要になります。

その結果として起きるのが、個人の能力・生産性の可視化です(これが三つ目)。一人一人に与えられた責任が明確になり、かつ進捗状況が把握できるようになると、従来のように「忙しそうにしている・残業している」だけでは評価に繋がらず、純粋に職務をこなす能力・生産性で評価されるようになります。

私はこれが、社会の一層の二極化を進めると見ています。

こんな世界でピラミッドの頂点に立つのは、基本的には、下の三つのカテゴリーのいずれかに当てはまる人です。

  • 資本家
  • 経営層
  • 専門職

資本家は特別な存在ですが、経営層と専門職に要求されるのは、専門的な知識と経験で、価値を生み出し続けることを期待されています。明晰な頭脳だけではなく、勉強し続ける姿勢もとても重要で、(自らが資本家になるまでの間は)常に走り続けることを要求されます。

微妙な立場に置かれるのが、下の三つのカテゴリーに属する人たちです。

  • 営業
  • 広告・宣伝
  • 管理職

コロナ後の世界でも、こういった業務は重要ですが、これまでの人間関係や勘だけに頼ったスタイルから、データやツールを活用したものに大きくシフトすることは明確なので、そこで力を発揮できる人と、そうでない人に別れていくと思います。とは言え、全てがデジタル・ツールに置き換えられるわけではないので、そこが面白い点でもあります。

コロナ後の世界で、もっとも大きな影響を受けるのは、下の二つです。

  • 事務職
  • サービス

特に単純にデータを入力する、書類を処理する、管理業務をする、帳簿を処理するなどの定型業務は、もっとも自動化がしやすい分野なので、それにリモートワークが重なると、大きな進化圧となって、リストラが進むと思います。逆にそこがちゃんと節約できない会社は、競争力を失って行くと思います。

ウェイター、ウェイトレス、レジ、窓口、などのサービス業務には、すでに十分な進化圧がかかっていますが、接触を減らすためにレジや窓口の自動化はさらに進むでしょうし、一部では無人店舗やロボットの導入も進み始めています。

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