決壊すれば被災者4億人か。中国「三峡ダム」が抱える欠陥リスク

 

そんな長江を制するべく、三峡ダム建設が着工されたのが1993年。完成は2009年で、発電、南水北調、水運、地域発展、洪水防止という5つの機能を持たせて造られました。三峡ダム水力発電所は、2,250万kWの発電が可能な世界最大の水力発電ダムです。この5つの機能の中で国内で最も期待されていたのは発電よりも洪水予防機能でした。

しかし、数年前から三峡ダムの堤防がゆがんで見えるという航空写真がネットで出回り、三峡ダムは早晩決壊するのではないかとの憶測も呼んでいるのです。

中国「世界最大ダム」の崩壊リスク…当局説明を信じ切れない人々

もちろん、この噂について中国当局は「このゆがみは計算上予測されたもので、堤防の強度に影響はない」と、あっさり否定しています。

ネットで調べればすぐに出てきますが、今まさに中国各地で起こっている水害の規模は大きく、様々な動画がアップされています。信号機がかろうじて見えるほどに市中で増水した様子などが見られます。三峡ダムは、7月のさらなる増水に備えて放流を行いました。

三峡ダム、今年初の放流 7月にさらなる増水の予想

そんななか、三峡ダムが決壊したらどうなるのでしょうか。以下、一部報道を引用します。

三峡ダムの下流は中国の最も都市と人口が密集している地域。万が一にも、三峡ダムが決壊すれば被災者は少なくとも4億人以上に達し、およそ30億立方メートルの土砂が三峡ダム下流域を襲い、上海までが水浸しになる、と言われている。大規模停電が起き、しばらくは復旧できまい。また、長江流域は中国経済実力の40%が集中する。つまり中国経済も潰滅し、その回復には数年かかるだろう。農業だって潰滅だ。

 

また三峡ダム下流域には解放軍のロジスティクス部隊の駐屯地が集中すると指摘されている。たとえば空挺部隊の9割も三峡ダム下流域に集中する。解放軍は大災害のとき最前線で救援作業を行うが、三峡ダム決壊の災害の場合、解放軍のロジスティクスも大打撃を受けて、救援作業に支障が出るのではないか、と言われている。

長江大洪水、流域住民が恐怖におののく三峡ダム決壊

三峡ダムは、不適切な建設工程によって決壊の危険性が生じたというだけではありません。そもそも、三峡ダムには洪水防止機能はなかったという専門家もいるのです。中国人専門家の王維洛氏の意見を報じた記事を一部引用します。

実際、三峡ダムに洪水防止機能などないのだ。すでに専門家の検証によって、そのことははっきりしていた。そもそも三峡プロジェクトは、設計から工程、仕上げの監査まで同じ人間がやっていて、審判とプレイヤーが同一人物みたいなものなのだ。

ダム下流の湖北、湖南、江西ではすでに洪水が発生している。ダム上流の重慶も洪水警報がでている。ダム上流域の人々はダムを決壊させないために、放水させろといい、下流域はこれ以上放水させるな(すでに洪水がひどいのに)という。そういう矛盾があることは、ダム建設前から分かっていた。

三峡ダムの設計エンジニアである銭正英、張光斗らは、当時の三峡ダム建設プロジェクト副主任の郭樹言に対して、三峡ダム工事のクオリティ、強度に問題があることを手紙で訴えていた。工事期間があまりにも短期であり、完成を急ぎすぎているから、欠陥があるのだ。

(昨年、三峡ダムが変形していることが判明し、ネットでも話題になったが)ダムの変形よりも問題なのが、ダムの船閘(ロックゲート)周辺から水漏れがあることだ。

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