ドコモに音声通話の卸料金値下げを要求した「喧嘩番長」日本通信

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MVNOの雄とも呼ばれる日本通信が、NTTドコモに対して求めていた音声通話の卸料金の値下げが総務省により認められ、大きな話題となっています。メディアが報じるように、「料金競争」は本格化するのでしょうか。ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんが自身のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』で、「かけ放題サービス」を含めた業界の今後を占っています。

総務省がNTTドコモに対して音声通話の卸料金値下げを要求――喧嘩番長の日本通信は「かけ放題」を実現できるのか

日本通信がNTTドコモに対して、音声通話の卸料金の引き下げを求めていた問題で、総務省は6月30日、NTTドコモに値下げを求める裁定を公表した。

日本通信の福田尚久社長が日本経済新聞などのインタービューに応じ「かけ放題プランを提供し、データ通信と合わせて2,500円以下の料金プランを提供したい」と息巻いていた。

ただ、過去を振り返ると、日本通信がMVNO業界の先鋒となり、NTTドコモに喧嘩して勝利をもぎ取るものの、勢いはそこまでで、結局、ビジネス上の美味しいところはIIJなどの大手が奪い去っていく気がしてならない。

日本通信は喧嘩は強いが、商売は下手という印象があるだけに、今度こそは頑張ってかけ放題プランを提供してもらいたい。

ただ、卸料金の値下げに関して、メディアなどは「料金競争が加速する」と煽り、自分自身も7月2日の日テレ「スッキリ!」でスタジオ解説させてもらったが、頭の片隅で「本当に料金競争につながるのか」という点は半信半疑だったりする。

一つには、スッキリ!のMCである加藤浩次さんが指摘をしていた「LINEでいいじゃん」という事実。実際、社内や家族、友人の間ではLINEやFacetimeなどで充分であり、音声通話の需要が減っているのは間違いない(番組内では「法人需要があるので」とコメントしておいたが)。確かに、MVNOが苦戦しているのは「音声通話が高い」という理由が多く、今回の卸料金の値下げはMVNO業界にとっては大歓迎だろう。

ただ、値下げになったとは言っても、通話するごとに料金は発生するわけで、それでかけ放題が提供できる理由にはならない。

MNOなどがかけ放題を提供できるのは、ユーザーから定額料金をもらいつつ、発信による接続料の支出と、着信の接続料収入を相殺できる仕組みがあるからだ。MVNOには設備を持たない限り着信接続料はないわけで、ユーザーに膨大な時間、発信され続けたら、破綻するのではないか。

現在、総務省では接続料に関する研究会を開催しており、卸ではなく接続を用意すべきなのではないかという検討もされている。

また、NTTドコモは、MVNOが提供する音声通話の中継サービスを利用する際のプレフィックス番号をNTTドコモの設備で付与する準備を進めているという話もしている。

また、MNO側も、総務省の裁定が出る前から、卸料金についての検討をしたいと表明していた。

実際、どこまで本気で検討するのは不明だが、いずれにしても、MVNOやMNOにおける音声サービスについて、今後、何かしらの進展は期待できそうだ。果たして、それが「かけ放題サービス」の実現につながるか、ひいては「料金競争」に発展するかは別の話かもしれないが。

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