総務省が日本と世界の通信料金比較を発表――2年前よりも値上げ傾向で、菅官房長官もお冠?
6月30日、総務省は「令和元年度電気通信サービスに係る内外価格差に関する調査」を発表した。今年3月時点の東京(日本)、ニューヨーク(アメリカ)、ロンドン(イギリス)、パリ(フランス)、デュッセルドルフ(ドイツ)、ソウル(韓国)の6都市を比較したものだ。
総論としては「MNOのスマートフォンについて、東京の支払額は2GB及び5GBでは中位、20GBでは高い水準になっている」とのことだ。
これを受けて菅官房長官は「公共の電波を利用して提供されているが、料金は不透明であり、諸外国に比べ料金が高いという指摘をふまえ、政府としても『事業者間での競争がしっかりと働く仕組みづくり』に取り組んできた。大手3社の利益率は20%以上を占めており高止まりしているため、大幅な引き下げの余地がある」とコメントしている。
そもそもの話で恐縮だが、世界の都市と日本で通信料金を比較して、何の意味があるというのか。
日本では全国津々浦々、電波が届く状況にある。地下鉄や地下街であってもYouTubeを視聴できるほど快適なネットワークだ。これが他の国となれば、地下鉄では2Gや3Gで繋がるところも多く、品質は雲泥の差といえる。
また、日本ではキャリアショップの対応が素晴らしい。長時間の対応は余儀なくされるが、契約など実に丁寧に対応してくれる。商品購入のアドバイスなどにも乗ってくれるなど、本当にショップの店員さんには頭の下がる思いだ。
日本のキャリアショップが存在することで、シニアがスマホデビューできることもある。日本でITリテラシーを普及させるのに一役買っているのがキャリアショップといっても言い過ぎではないだろう。
一方、海外ではキャリアショップの数も少なければ対応もイマイチなところばかりだ。ただ、契約して終わりというところも多い。
全国に広がるネットワークとキャリアショップの対応を含めて「通信料金」といえるのだ。
総務省が調べたデータを見ると、2018年度が安くなり、2019年度には値上げ傾向になった。下手をすると来年調査する2020年度は、5Gスタートもあってさらに金額が上がるかもしれない。
となると、ここ数年、総務省が散々、市場を引っ掻き回してきた、あらゆる施策は何の効果も発揮しなかったということになる。
先日、総務省で行われた有識者会議でもアップルが指摘していたが、ここ最近、MNPの件数がガタ落ちとなっている。昨年の法改正以降、流動性が落ち、ユーザーが全く移行しなくなっている。
先日、楽天モバイルが100万件を突破したとアナウンスしていたが、その大半は新規契約でありMNPではない。
MNPでユーザーの流動性が高まることで、値下げ競争につながるのだから、総務省のこれまでのやり方は間違っていると認めべきだ。まず、これまでの過ちを認め、軌道修正を図らないことにはいつまで経っても菅官房長官は「4割値下げできる余地がある」と言い続けることになるのではないだろうか。
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