黒人殺害抗議デモの裏で暗躍。謎の武装集団「ブーガルー」とは

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あまり日本では報道されなくなりましたが、アメリカで6月に広まったデモは今も各地で続いています。暴徒化して大荒れとはならないものの、激しい抗議行動がなくなることはありません。そんなアメリカで、新たな過激な武装集団「ブーガルー(Boogaloo)」の存在が注目されていると語るのは、『未来を見る! 「ヤスの備忘録」連動メルマガ』の著者・高島康司さん。ブーガルーがどんな集団なのか解説すると同時に、その背後にある勢力についても迫っています。

抗議運動の隠されたアジェンダと壮大な計画

「ブーガルー」に隠されたアジェンダはあるのか?

それでは今回のメインテーマを書く。前回は、「BLM」運動や「アンティファ」に資金支援をしている組織のことを書いたが、今回はその対極にあってこれらの勢力と鋭く対立している極右の武装勢力、「ブーガルー」についてである。

アメリカ国内の不安定な状態が落ち着く様子はまったくない。逆に新型コロナウイルスのパンデミックは、全米23州で再拡大しており、新たなロックダウンの必要性も叫ばれるようになっている。特に一日の感染者数が3000人を越えて拡大しているフロリダ州やアリゾナ州などは、早期にロックダウンを解除し、経済活動を再開した州だ。経済活動の再開が早すぎた結果、感染拡大につながったことが指摘されている。

また、「BLM」やロックダウン反対運動などの抗議デモが活発に行われている地域でも感染が拡大している。たとえばサウスカロライナ州などでは、抗議デモでクラスターが発生し、集団感染が拡大するケースが見られている。これは抗議運動が活発に行われている他の州でも同様の状況なので、感染を拡大させている大きな要因のひとつになっている可能性が高い。

いまワシントン州のシアトルでは街の中心部から警察が撤退し、抗議運動が地域を占拠する自治区が作られている。これと同じ動きが首都のワシントンでも進んでいる。自治区ができると、力による強制排除を明確にしているトランプと衝突する恐れも出てきている。

過激な武装集団、「ブーガルー」

このように、いまだにアメリカでは激しい抗議運動が続いており、それと同じタイミングで進められている経済活動の再開とあいまって、新型コロナウイルスの感染拡大が止まらなくなっている。第1波が収束する前に第2波が始まるという状況になっている。感染の拡大と抗議運動の広がりとが一緒になり、社会的な混乱を一層強めている。

そうした状況で、新たな過激な武装集団の存在が注目されている。それは、「ブーガルー(Boogaloo)」だ。すでに日本でも一部で報道されているので、知っている読者もいるかもしれない。これは、極右の過激な武装勢力である。これまではほとんど知られていなかったが、注目されるようになったのは、5月29日に起こったある事件からだった。

5月29日、西部カリフォルニア州のオークランドで行われていたジョージ・フロイド氏の殺害に抗議するデモが過激化するなか、連邦裁判所の警備職員が銃撃され、殺害された。犯人は32歳の空軍下士官ら2人だった。6月6日、容疑者は逮捕された際、保安官代理らと銃撃戦となり、1人を殺害した。逃走中に強奪した車のボンネットには自分の血で「BOOG」などと書かてれいた。

これは、極右の過激な武装集団、「ブーガルー」のメンバーであることを示す合言葉である。この男はフェイスブックで共犯者に「抗議デモは法執行機関の職員を標的にする絶好の機会だ」と暴力を呼びかけていた。

また、西部ネバダ州のラスベガスや、南部サウスカロライナ州のコロンビアなどでも、「BLM」の抗議デモで火炎瓶を所持したり、略奪や破壊行為を起こしたりしたとして「ブーガルー」のメンバーとされる複数の男が逮捕され、起訴されている。

「ブーガルー」とはなにものか?

「アンティファ」は日本でも大分知らるようになっているが、「ブーガルー」は一部のメディアで取り上げられているものの、知られているとはいえない存在だ。闇のなかからいきなり現れた、得たいのしれない武装集団という印象だ。

「ブーガルー」の歴史は浅い。昨年の2019年にアメリカのアングラ系掲示板、「4Chan」の投稿から始まった。「Qアノン」とほぼ同時期に、同じ掲示板の投稿から始まったのが実に興味深い。

ちなみに「ブーガルー」という名称は、2014年に公開されたドキュメンタリー映画、「エレクトリック・ブーガルー」からとったものだ。このドキュメンタリーは1967年から1994年に白人のヒーローが銃で敵を殺しまくるB級映画を専用に製作していた映画プロダクション、「キャノン・フィルムズ」のドキュメンタリーである。「ブーガルー」とは、「キャノン・フィルムズ」が作る暴力的なB級映画のファンが集まって作った組織だ。アロハシャツに防弾チョッキ、そして自動小銃で武装しているのが彼らの共通の特徴だ。

しかし、「ブーガルー」の活動は映画ファンの集いのようなものではない。新型コロナウイルスの蔓延はエリート層がアメリカ国民を支配するために作り出したフェイクニュースだとし、反抗を呼びかけている。南北戦争のようなアメリカ第2内戦を引き起こすために、警察や政府機関を襲撃し、「アメリカ第2革命」を実現するのだとしている。

「アンティファ」のように「ブーガルー」にも統一した組織があるわけではない。「4Chan」や「Redit」、そして「8Kun」などの掲示板、そしてフェイスブックなどのSNSに集まったイデオロギーを共有する人々が「ブーガルー」を名乗り、任意で活動を行っている分散型の集団だ。

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