フリーと名ばかり個人事業主の窮状
【毎日】は2面の「焦点」で、フリーランスなどの窮状について書いている。見出しから。
- コロナ休業 フリーランス「綱渡り」
- 「実態は社員」でも補償なし
- 全国で462万人 法整備急務
個人事業主として仕事を請け負うフリーランスは、営業自粛や経営悪化を理由に一方的に仕事をキャンセルされても、雇用労働者が対象の「休業手当」は支給されないため、苦境に立たされているという。
典型的な「フリーランス」の実例として挙げられているのは、ひとり親で2男3女を育てるピアノ講師の女性。個人レッスンやアルバイトとして働き、生計を維持していたが、仕事が激減し、一時は収入ゼロに。
ヨガスタジオ「ヨギー」で働いているインストラクターたちの例は「名ばかり個人事業主」と言われる形態。組合は「実態は雇用労働者」だと主張しているが、会社側は休業を指示しながら休業手当を払わず、一方的に一部のクラスを打ち切ったりしている。ヤマハの子会社が全国展開する英語教室の講師らも同様で、個人事業主とされているが、会社は報酬を給与として支払い、源泉徴収までしているのに休業手当を支払わず、報酬の20%分が見舞金として1回支給されただけ。このケース、個人事業主かどうかも曖昧なため、持続化給付金の申請が認められるかどうかも不透明だという。
uttiiの眼
人を使う側は、人手を確保したいが為に給与を支払って事実上の雇用関係を結びながら、社会保険料を“節約”するために飽くまで個人事業主として請負契約を結んできたのだと思う。企業が自分たちの都合だけで「人件費コスト」を下げられるように、制度もまた巧妙に仕組まれていたと言うことができる。企業に好都合なシステムが、コロナ禍で一斉に牙を剥き、働く人に襲いかかっている。その状態を、会社は意図的に放置し、大切な労働者を窮地に追い込んで恥じることがない。
皮肉なことだが、コロナ禍によって仕事が奪われてしまったため、現実の労働関係の問題が露わになったということも言える。《毎日》は、フリーランスの働き方を保護する法整備を急ぐべきだという結論だが、本当に考えるべきは労働基準法を、真に労働者の権利を守れる法律に生まれ変わらせることではないだろうか。「労働形態による賃金差別の禁止」という1条を入れ込むだけで、世の中は大きく動き出す可能性がある(当然、全国で「賃金差別」の解消を訴える裁判の頻発が必要だが…)。
息を吹き返した首都機能分散論
【東京】は2面に首都機能の分散についての議論を取り上げた記事。見出しから。
- 脱東京一極集中「チャンス」
- 首都機能分散議論が活発化
- コロナ契機に自民議連◆地方も期待高まる
リードは、「新型コロナウイルスの感染拡大で東京に人口や企業が集中するリスクが明らかになった」として、「首都機能の移転・分散の議論が活発化している」という。
首都機能移転の議論は90年代に活発化したが、巨額の移転費用などに慎重論が相次ぎ、移転先と考えられてきた地方を含め、議論はいったん下火に。
今回、コロナ禍を機に再燃した形で、自民党の「社会機能の全国分散を実現する議員連盟」は「一極集中是正は、感染症対策でも経済面からも必要だ」(古屋圭司会長)と意義を強調。
uttiiの眼
当然ながら、小池都知事は否定的なようだ。しかし政府は、骨太の方針などで一極集中を是正する方針を掲げている。また、以前、最高裁の移転先候補地に挙げられていた岐阜県の東濃地区は、リニア中央新幹線の中間駅も設置予定で、「東京に全てが集中している必要はない。リニアで移動もしやすくなる。今がチャンスだ」と意気軒昂なようだが、どうも「便乗」しようという腹が見え見えで、はたして大方を納得させられるような意義を示しうるのか、疑問が残る。
そもそも、テレワークが普通になったのなら、逆に中枢は1カ所に集中していても構わないはずであり、残るは感染症対応ということになるが、政府が地方の医療体制に力を注ぐことを中心に考える方法もあるだろう。
「首都機能移転」ありきでは二進も三進もいかない。
あとがき
以上、いかがでしたでしょうか。
3紙までは「窮状」で統一できましたが、《東京》はそうはいきませんでした(笑)。まあ、しかし、窮状はそこここに満ちあふれています。政府は「GoToトラベル」を強行するようですね。しかし、西村経済再生相がなんと言おうとも、感染の収束はまだ見えていないのです。
image by: 首相官邸