コロナ後の世界:資本主義の危機
先週紹介したBusiness Casualが結構面白いインタビューをしているので、過去に遡って聞いているのですが、そのうちの一つで、NASDAQのCEO、Adena Friedman氏が「資本主義の最大の敵は貧富の差だ」と主張しているのがとても印象に残りました(参照:Business Casual)。
Q: What’s the biggest threat to capitalism as it exists today? @Nasdaq‘s @adenatfriedman ?? pic.twitter.com/6RH7ehtwap
— Business Casual ?? (@bizcasualpod) August 11, 2020
NASDAQは、AppleやTeslaなどのIT企業が上場している市場ですが、今や株価が(失業者が20%以上もいる)実体経済とかけ離れて高騰しているため、ただでさえ広かった貧富の差が、さらに広がると言う状況を作り出している張本人でもあります。
米国では、警官による黒人男性の殺害事件以来、“Black Lives Mater”と言うスローガンのものに大規模なデモ行進が各地で行われ、その混乱に便乗した破壊行動や強奪が起こっています。
前にも説明しましたが、この手の破壊活動は、地元ギャング団がSNSで便乗者たちを大量に集めて計画的にカオスを作り出しているため、取り締まるのが簡単ではないのです。
そんなことが起こってしまう一番の理由が「貧富の差」なのです。社会の底辺で辛うじて最低賃金の仕事をして稼いでいた人たちが、ロックダウンのために解雇され、社会に対する不満と暇の両方を持て余しているから、こんなことが起こってしまうのです。
政府は、新型コロナによって引き起こされた不景気が、リーマンショックのような金融危機に発展しないように大量のお金をばら撒いていますが、それが株式市場に流れ込んで、「資産バブル」を作り出しているのです。
そして、それが結果として、貧富の差をさらに広げることになっているのは、大きな問題です。このままの状況が進むと、全米各都市のダウンタウンは危険すぎて普通の人が近づけない危険地帯になってしまいます。
私がもっと心配しているのは、こんな状況に便乗して、極右や極左の政権が誕生してしまうことです。トランプ大統領は、その前座のようなもので、その先にはヒットラーのような人が待ち構えていると覚悟した方が良いと思います。
その意味では、トランプ大統領の対抗馬である民主党のバイデン氏は、左翼中道なので、安心して政治を任せられる人ではありますが、オバマ大統領のようなカリスマ性がないのが大きな欠点です。世論調査では「バイデン有利」ではありますが、それで安心して投票率が低くなると、熱烈なファンが多いトランプ氏に有利に働くので、それが心配です。
日本は日本で、安倍政権をここまで長期政権にしてしまったツケが大量に溜まっていますが、野党が分裂したままでは、まともな戦いも出来ないという情けない状況になっています。
何れにせよ、どの国も富の再分配の方法を根本から変える必要があると私は考えています。そしてそれと同時に、グローバルにビジネスをする企業からどうやって各国が課税するか、という「グローバル化された世界に相応しい税制」も必要です。
その意味でも、そろそろ「負の税制」とも呼ばれるユニバーサル・ベーシック・インカムの導入を各国が真剣に考慮しても良い時期に来ているように思えます。
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