マジで?みんな大好き「Slack」がMicrosoftに敗色濃厚、その理由とは

 

改めて思うビル・ゲイツの凄さ

東海 シバタさん視点で、ビル・ゲイツが他の経営者と違うところはどのような点だと思いますか?

シバタ やはり競争に勝つということに関して、すごく最適化した行動をとる人という印象です。Officeの中でも、例えば ExcelとPowerPointは、元々M&Aで買っている製品です。そういうところの賭け方や買った後の敵の潰し方などは、悪い言い方をすると冷徹な、良い言い方をするとすごくロジカルな判断をしているという印象です。

本で読んだ世界なので、中で一緒に仕事をしていた人はまた違う見方をされるかもしれないですが、やはりその変の勝負に負けない戦い方をしているのが、すごいなと思います。

東海 Slackは本当に訴訟を起こすしかなかったということかもしれませんが、これで今の状況に大きな変動がないままこの件が終わるとすると、Microsoftの強さを証明しただけになってしまった、ということで片付けられてしまうかもしれない、ということでしょうか?

シバタ ただ、Slackも色々と手を打とうとしており、例えばAmazonと連携しようとしています。また、プロダクトを磨く余地はまだ十分あると思っています。たとえば、音声やビデオ周りは、もちろんやっているのは知っていますが、Slackを使っているにも関わらず、みんなZoomを使っているわけです。これは本来Slackで出来て良いことだと思います。

これらも含めて、他にもパートナーシップなども色々とやり方はあると思うので、完全にSlackがダメになってしまったかというと全然そんなことはなくて、Slackという会社も素晴らしい会社だと思います。

ただ、Microsoftという会社が敵になりそこと比較をすると、残念ながらMicrosoftに軍配が上がってしまいます。

スタートアップが大手に勝つ“信長の戦法”

東海 このように、スタートアップが良い製品を作っても、それに隣接する分野の大きな会社が途中から参入して、一気にユーザーを持っていってしまうというパターンはよくあることだと思います。このような時に、小さな会社はどのように戦っていけば良いと思いますか?

シバタ これは基本的に歴史が好きな方は分かると思いますが、織田信長の局地戦で勝つという戦略しかないと思います。

スタートアップが、例えば社員が100人しかおらず、ある一個のプロジェクトに集中しているとして、大企業は社員が1万人いますが、リソースが分散しており直接競合するプロダクトには実は担当者が合計で50人しかいなかったとします。

そうすると、50人でやってるところと100人でやっているところだと、100人の方が勝てたりします。

このような局所戦で勝つしかないですね。手を広げないで自分達が得意なことでひたすら戦い続けるしかない、というのが基本的な考え方です。

ただ、Microsoftと当たるとさすがに部が悪すぎるという世界が今回の話だったかなと思います。「相手が悪かった」ということです。Slackが何かミスをしたというわけでは決してないと思います

東海 難しいですね…本当にMicrosoftと隣接してしまったことやコロナにより一気にユーザーが増えるなど、色んな状況が重なってこのようなことになったと思いますが。

シバタ そうですね、あとはやはりMicrosoftの経営者が変わった後の俊敏性もあると思います。先ほど申し上げたように、社員が1万人いるけれど50人しか投下できてないという状況ではなく、おそらく仮にSlackの戦力が100だとしたら、Microsoftは500くらい戦力を投下しているはずです。

この意思決定が出来ている会社はやはり強いなと思います。普通はそれができなくて、50対100で戦って負けてしまいます。「うちの方が大きいのになんで勝てないんだ」という議論になりがちです。

全体では1万人いて大きいのですが、実は戦力は50しか入っていないといった世界が起こるので、そこを局所戦を仕掛けられたMicrosoftが局所戦でやり返したという話です。

東海 Microsoftの方が1枚も2枚も上手で進んでいるという感じですね。

シバタ それはそうだと思いますね。既存のユーザー等も含めると、やはり機能的にどうこうというよりも、ビジネスの組み方としては、やはりOfficeというビル・ゲイツの遺産が強いというのが僕の印象ですね。

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