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2020年秋の中国を襲う「食糧不足」は日本と世界を混乱に巻き込むか?

強気一辺倒と言っても過言ではない中国の外交姿勢が、習近平政権に想定外の形でダメージとなって戻ってくることになりかねないようです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者で日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、長江上流を襲う豪雨や蝗害により、中国が深刻な食糧不足に襲われる可能性を指摘するとともに、習政権の「戦狼外交」が祟り穀物や食肉の輸入がままならなくなる危険性にも言及。さらに中国での食糧危機は同国のみの問題にとどまらず、世界的な危機にまで発展するとの予測を記しています。

中国食料不足で世界が混乱する

コロナ被害、長江の氾濫、豚コレラの蔓延、米中対立と中国の孤立化、バッタの害などで中国の苦難が続いている。これにより、食料不足も起きる可能性が高い。今後を検討する。

米国および世界の状況

NYダウは、2月12日29,568ドルまで上昇して史上最高株価になった。そして3月23日18,591ドルまで急落して、8月14日は27,931ドルになっている。8月17日は86ドル安の27,844ドル、18日は66ドル安の27,778ドル、19日は85ドル安の27,692ドル、20日は46ドル高の27,739ドル、21日は190ドル高の27,930ドル。

NYダウは28,000ドルを超えそうであり、SP500も最高値を更新、ナスダックも最高値を更新し続けている。というように米国株は好調である。

新規失業保険申請件数が110万件と増え始めているが、8月の米総合購買担当者景気指数PMIが54.7と、2019年2月以来の高水準を付けた。

そして、FRBは、FOMC議事録でコロナ不況が当分続くので、インフレでも長期に公定金利を上げないとしたので、ハイテク株が上昇。

特にアップルは、米企業として初めて時価総額2兆ドルを超えた。アップルの株価は好調であるが、その裏には株式分割と自社株買いもあるようだ。

もう1つ、公定金利上昇がないとしたことで、インフレに寄り実質金利はマイナスになるので、ドルの信認が低下して、ドル安ユーロ高が続いている。

とうとう、バフェットも動き、金利低下でバンカメ以外の金融株をすべて売り、産金会社の株を買っている。今まではドルの現金ポジションを増加させていたが、ドル信認低下が起こると予測して、SP500と比べて値上がりが少ないバーク・ハザウェイの自社株買いを行ったようである。

株価が好調でも、8月から失業給付の特別増額がなくなり、当分低額の失業給付だけであるが、就職しようにも、職がない状態になる。今後、ロビンフッダーと呼ばれる米個人投資家が、どのような動きをするのかが注目点になっている。

日本の状況

日経平均株価は、2018年10月02日に24,448円でバブル崩壊後高値になり、2月21日は23,427円で、3月19日16,358円まで下げ、8月14日は23,289円で、8月17日は192円安の23,096円、18日は45円安の23,051円、59円高の23,110円、20日は229円安の22,880円、21日は39円高の22,920円。

日経平均株価は、23,000円台を復活したが、週後半に22,000円台に下落した。SQ後下落と見通した通りになっている。

コロナ第2波のピークになったが、自粛が緩和しているので、第1波の時のような経済の大きな落ち込みは起きていない。しかし、人の移動や飲食は、依然低水準になっている。このため、GoToトラベル・キャンペーンも需要喚起ができずに空振りのようである。そして、上場企業でも破綻する企業が出てきている。

夏でも、第2波になり重症者も増えて、死亡者数も増加してきたが、感染のピークは過ぎたようだ。次は、3ケ月先の11月になって第3波が起きる可能性がある。このため、ワクチンと有効な治療薬の実現が待たれる。

それまでは、65歳以上の方は十分に注意した方が良い。しかし、60歳以下の人たちは、3密を注意して経済活動を十分に行ってください。

そうしないと、秋に向けて、一層飲食業界と旅行業界、エンタメ業界は厳しくなり、多くの企業の倒産や廃業、リストラが心配になってくる。

とくに地方の観光業界の痛手はすごいことになる。倒産・廃業が多発して、地方での雇用は農林業分野しかないことになる。雇用のシフトが起こることになる。しかし、観光業より農業分野の雇用力は小さいので、多くの人が雇用を求めて都市に流れてくることが容易に想像できる。それと、日本の経済力は、観光業などの衰退とともに大きく減少する。このため、コロナが収束できる2年間程度、景気が悪い状態が続くことになる。

しかし、コロナ収束後、インバウンドが戻り、その時に立ち上がれるような準備を観光業界も考えておくことが重要になる。今は、早いうちに休業、一時解雇などをして、大幅にコストを抑える努力が必要な気がする。

当分、株価は高いが、景気の回復を期待しない方が良い。

中国の氾濫で

長江の長期の雨で氾濫が起きているが、三峡ダムも145mの制限水位を大幅に超えた166mになり、設計限界値175mにも迫っている。このため、最大限の放流を続けている。しかし、ダム上流地域の洪水が拡大して、上流の大都市・重慶の都心部の地下街も水没している。

一番の問題が、三峡ダムからの越水とダム決壊であるが、もし決壊となると4億人が被災することになるが、決壊するかどうかは分からないので、ここでは議論しない。あったら、大変さが増すことになるだけ。

大量放水で、現在でも三峡ダムの下流部でも、大きな面積の土地が洪水の被害を受けている。この地域は農業地域でもあり、ここでの収穫は絶望的になっている。

その上に、大量のバッタが押し寄せて農産物を食い荒らされて、中国の雲南省、湖南省、吉林省、黒竜江省で被害が広がっている。もう1つに、中国で豚コレラの被害が出て、食肉を米国などから輸入せざるを得ない状態になっている。

さらに今までの戦狼外交で、欧米にも周辺諸国にも強硬な外交をしてきたことで米国などの怒りで、特に香港の国家安全維持法施行で、米国は本当に怒り、最悪はドル決済できなくなる可能性が出ている。

この状況で、もしも南シナ海や台湾海峡で米中間の軍事的衝突が起きかねない状況になると、「戦時食糧備蓄」の観点からさらに厳しい局面を迎えかねない。現に北京では米中戦争を想定した防空訓練が始まっている。

その上に、軍事的衝突危機前にドル決済圏から追放されると穀物輸入と食肉輸入を円滑にできなくなる心配にもなってきている。

このために、習近平は「飲食の浪費現象は目に余る驚きであり、心が痛む。皿の中の食事にどれだけの人々の苦労が詰まっていることか。我が国の食糧生産は豊作年が続くが、食糧安全に対しては終始危機意識が必要だ。今年は新型コロナ肺炎のパンデミックの影響があり、さらに我々は警鐘を鳴らさねばならない」と強調した。

これにより、中国が突然、「食べ残しはやめよ」と呼び掛ける大規模なキャンペーンを打ち出した。長江の氾濫などで食料供給混乱の可能性に備え、かつ食品の輸入依存を減らすのが狙いのようだ。

一方、中国では、習近平国家主席は、公安当局の幹部が相次いで粛清している。反腐敗キャンペーン中で失脚させられた周永康氏(元政治局常務委員。無期懲役)の影響力が残っていて、次々に排除されているようだ。

これは、習近平体制に不満がある勢力がいることを示していることになる。この不満を解決するためにも習近平政権は、食料不足が起きた際でも農産物の輸入を増やすことができるように、中国の孤立化を避けたいようである。

このため、韓国への習近平主席の訪問を実現するべく、外交トップが訪韓している。韓国も米中対立で中国寄りになるようである。これにより、米日韓の3ケ国国防相協議が中止になっている。

そして、中国商務部は、米中双方は近く対話を行うことで合意しているとした。

一方、米国は、中国の苦境を見越して、中国との第2次貿易協議に入らないと宣言し、トランプ大統領は、今は中国との対話を行わないとしている。ここに米中の思惑の違いが出ている。

このため、中国は、輸入先として、仕方なくブラジルや強硬に対応していたオーストラリアからの輸入を増やすしかないことになる。

よって、今、中国は、香港の民主勢力への圧力を減らし、かつ尖閣列島に近づかないように漁船に指示を出している。これらにより、ドル決済システムからの追放を免れようとしている。米国もハイテク分野の排除はするが、農産物の中国への輸出はしたいので、ドル決済システムからの追放はしないようだ。

事実、バイデン候補は、中国に軍事的面では対抗するが、関税戦争、貿易戦争などは行わないと公約した。対して、トランプ大統領の中国制裁で、中国は米国からの農産物の輸入を止めている。

このため、前回選挙でトランプ支持の北西部の農業州でのトランプ支持は、大きく落ちている。逆の見方をすると、中国はバイデンを大統領選挙で勝たせたいようだ。

しかし、秋口になると、中国の食料輸入は、今までとは違い大規模になることが想定できる。中国以外でもインドなどでバッタの被害を受けている。このため、食料価格が上昇して、世界的な食料価格の高騰と、途上国での飢餓や暴動、内乱などが起こる可能性が出てくることになる。

日本も同様であり、秋以降、景気が悪くて、給与が減り、かつ食料価格が高騰するという事態になる。世界では戦争、内乱など不穏な空気が流れることになる。

ホワイト・スワン(世界的な予見できる危機)は、中国の食料不足が起因で起きる可能性を感じる。

米大統領選挙

トランプ大統領は、ラストベルトの白人有権者と福音派の支持を強固にするために、内政・外交政策を変えてきている。1つには対中強硬政策にシフトした。この政策ではラストベルトの白人層の支持を得ることができる。

沿岸州のサービス産業労働者への過度な給付金を止め、貧困層やサービス産業労働者の投票を阻止するために郵便投票拡大を阻害している。

もう1つが、中東政策で、UAEとイスラエルの国交正常化の仲介を行い、福音派の支持を得ることができた。イラン・シーア派が強くなり、劣勢のスンニ派とイスラエルを同盟関係にして対抗させるということである。これに対して、イランは同国領海にいたUAEの漁船を拿捕したように、イランとUAEの間で緊張が高まっている。

そして、米国は、スンニ派とイスラエル関係ができた時点で、アフガニスタンとイラクから米軍は引き上げるようである。

コロナ対策では、集団免疫という考え方で、コロナ対策をしない方向を志向するようである。そのかわり、ワープ・プロジェクトとして、ワクチンの完成を急がせることにした。経済の落ち込みを最小限に抑えたいが、結果はコロナ感染拡大で、経済的な落ち込みも大きい。マスクは個人の自由と言うことで感染拡大したが、それは集団免疫を作るには良いと主張している。

一方、ジョー・バイデン前副大統領は、党の大統領候補として正式指名を受諾した。受諾演説でバイデン氏は、「米国暗黒時代の終わりは今晩ここで始まったと、歴史が言えるように」取り組んでいくと約束した。

まず、バイデン候補は、コロナ感染拡大をトランプ大統領の責任として非難しているが、感染拡大対策として、専門家の意見に基づき、迅速な検査体制を含む国家戦略づくりを約束した。また、中国との軍事的な対決はするが、経済関係では協調していくという。

もう1つが、環境インフラやIT部門などに3兆ドル(約320兆円)近くを充て、1930年代のニューディール政策以来の大規模投資を公約する。

また、格差是正のために、富裕税を取り、法人税も元に戻すという。ウォール街には厳しいことになっている。バイデン大統領になったら、株価は大幅な下げを記録しそうである。

このためか、民主党大会のテレビ視聴率は、非常に低く、盛り上がりに欠けていたようである。トランプ対バイデンの支持率も、一時より接近してきた。

コロナ感染での重症者拡大

大阪府は、19日現在の重症者が60人で、重症用病床の使用率が31.9%となり、跳びぬけて多い。家族内感染が多く、高齢者への感染を引き起こして、第1波の時より重症者が多くなっている。

このため、高齢者やその家族、利用先の施設職員らに、早めに検査を受けることなどを呼びかけている。

全国でも、19日時点の病床の使用率は、沖縄、福岡など7都府県で40%を超えている。特に沖縄の使用率は71.1%でひっ迫している。

日本人全員に免疫があり、コロナは風邪と同様で、60歳以上の感染でも軽症だと主張してきた評論家は、この状況をどう評価するのであろうか?

しかし、事実は、60歳以上の人では注意が必要であるとわかる。死亡者数も毎日10人以上になってきた。

接触確認アプリCOCOAで、接触ありとの通知を受けてもPCR検査を受けられないと7割の人が言っているが、厚労省はアプリで通知を受けた場合、希望者全員が無料でPCR検査等を受けられるようにすると、非難が出たことで対応を変えている。

しかし、感染の可能性がある人でも検査が受けられないという日本のPCR検査を絞る予防策が、感染を拡大させているとも見える。

韓国は可能性がある人達全員を検査して、早期に感染拡大を止めているのとは、対照的である。このため、韓国経済は、あまり落ち込んでいない。

日本は検査を絞り感染拡大で、60歳以上の人の行動を自粛させて、日本経済を縮小させている。日本人全員に免疫があるので心配ないということが、日本経済を縮小させる原因になっている。

このことを認めて、路線を変更することが日本沈没を免れる道と見る。勿論、検査を可能性がある人全員に行うことである。

コロナ分科会は、全国的には感染のピークに達し、7月下旬が感染のピークと位置付けられるという。これから重症者と死亡者が増える時期になる。第1波と同様な傾向であり、第2波時点でコロナの弱毒化も日本人全員に免疫ができたこともない。事実が示している。

さあ、どうなりますか?

image by: 360b / Shutterstock.com

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