米国から見た菅政権「3つの特徴」日本が誇るべきこと再考すべきこと

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大きな混乱もなく、9月16日に成立した菅義偉内閣。「国民のために働く内閣」と総理自ら銘打った新政権ですが、国外から見た場合にはどのような「輪郭」が浮かび上がってくるのでしょうか。米国在住作家の冷泉彰彦さんは自身のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』で今回、アメリカから見た菅政権の3つの特徴を記しています。

「菅政権成立」をアメリカから眺めると

菅内閣が発足しました。この秋は、奇しくも太平洋の両側でアメリカの大統領選と、日本の大臣交代が起きており、極めて政治的な季節となっています。菅内閣の発足に関しては、日本では安倍政権の良くも悪くも継承であるとか、あるいは再び官僚組織と対決する行革内閣になる、または地味な仕事師内閣などといった印象で受け止められているようです。

ですが、世界的な観点、とりわけアメリカから見ていますと、いくつかの特徴が浮かび上がってくるようにも思うのです。

1つ目は、あくまで日本の政治が中道だということです。アメリカの左右対立は本当にひどいことになっていて、共和党をトランプ派つまり右派のポピュリズムがジャックした格好になっている一方で、民主党では左派の勢いが強く、とにかく政治の分断が顕著です。

一方で、日本の場合は今回の総裁選においても、大きな政策の差はありませんでした。与野党の違いというのも、エネルギー政策や軍事、あるいは歴史などのイデオロギー対立が主であって、そこに統治を積極的に行おうというエネルギーと反権力のエネルギーが乗っかっている、その程度です。ですから、政策のほぼ全領域と、その根底にある価値感が分裂しているアメリカから見れば、極めて穏健な対立に過ぎません。

考えてみれば、安倍政権の7年8ヶ月を振り返ってみると、右傾化が進んだというよりも、左右の極端な主張が弱まって全体としては中道に寄ってきている、そんな印象があります。例えば移民政策、LGBTQへの理解、女性宮家問題、夫婦別姓などについて考えると、対立は明らかに鎮静化しているし、合意形成が進むことに反発して原理主義的な反対が火を吹く傾向もないし、動きとしては落ち着いています。全体が左にズレたというよりも、全体が真ん中に寄ってきたと言っても良いように思うのです。

菅政権の誕生というのは、ある意味でその象徴なのかもしれません。総裁選の議論の中で、石破茂氏が「アジア版NATO」構想に言及した際に、菅氏は「反中包囲網にならざるを得ない」との理由で否定したあたりに最適解があるのだと思います。

2つ目はコロナ対策の問題です。安倍総理が退任会見で述べたように、検査拡大、法定伝染病の2種扱い解除など、新しい対応がスタートします。GoToへの東京参画も10月から開始の見込みです。

厚労省は変わる姿勢が見えないので、じゃあということで組織防衛してくれる加藤氏を使い捨てて論功で官房長官にしたあとは、同じように組織防衛してくれる田村氏という人事。そうなると厚労大臣の世論への影響力はゼロなので、継続して西村氏をPRの顔で進めるというのは、全体的にはイヤなストーリーです。しかし、菅さんとしては「他に手段はないので、実務的にこれで行く」ということなのだと思います。

問題は、小池知事がコロナを使って国政にプレッシャーをかけていることですが、当面はこの布陣で抑え込むということなのでしょう。これも実務的には理解できます。ですが、アメリカという「コロナで滅茶苦茶になったケース」から見ていると、そもそも住民の衛生意識という「強固なインフラ」があり、1億3,000万の人口で死者が1,500人だけという大成功(アメリカは3億人で死者20万)を収めている割には、社会が明るくないというのは注目に値します。

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