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韓国の親日仕草に騙されるな。対日融和にはしゃぐ文在寅の危険な本性

4月に行われた総選挙では、反日感情を煽り圧勝を収めた韓国の文在寅大統領。ここに来て「対日融和戦略」に取り組む姿勢を見せ始めていますが、自らが史上最悪にまで冷え込ませた日韓関係は、冷静な話し合いが再開できる地点まで戻ることは厳しいと言っても過言ではありません。なぜ文大統領は大局に立った日韓関係を築けなかったのでしょうか。その大きな理由として、文大統領の「原理主義者的な思考」を挙げるのは、ジャーナリストの勝又壽良さん。勝又さんは自身のメルマガ『勝又壽良の経済時評』で今回、文大統領が原理主義者故に執着し続けた歴史問題が日韓双方に不利益をもたらした事実を、批判的に記しています。

「原理主義者」文在寅、リアリストの金大中にならなければ日韓復縁は不可能

韓国は、菅首相就任への祝賀メッセージを送って、日本の反応を覗っていた。型どおりの日本側の返書に痺れを切らして、日韓首脳の電話協議を日本へ要請した。こうして、日韓首脳電話協議が9月24日、約20分間行われたのだ。

焦点は、むろん旧徴用工賠償問題である。菅義偉首相は、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領に対して元徴用工問題が「非常に厳しい状況にある両国関係をこのまま放置してはいけない」と伝えた。文大統領は、「両国政府とすべての当事者が受け入れられる最適な解決方法をともに探したい」と提起したという。

このやり取りについて、韓国与党は日本に脈ありと踏み、乗り気になっている。自民党が無反応であるのと比べて、韓国側は積極的に対応する姿勢を見せている。韓国与党「共に民主党」の金太年(キム・テニョン)院内代表は9月25日、「韓日関係の未来志向的発展のために韓日首脳会談を含むハイレベル対話交流の活性化を提案する」と表明した。金氏はこの日、与党の最高委員会議で「(韓日)両国は歴史問題を解決し、未来に進まなければならない宿命的課題がある。この問題を解くためにハイレベル対話と意思疎通が必要だ」と述べたほどだ。

5ヶ月前の反日が友好論へ

4月の総選挙で、韓国与党は、「韓日決戦」を謳い文句に反日感情を煽ったが、もはや日韓関係がそういう感情論で対処できない局面にあることを物語っている。韓国が、日本との関係を正常化しなければならない段階に追い詰められているのだ。それは、中国からの恫喝をかわすには、日韓関係を改善して「アドバイス」を貰えるような状況に改善させなければならないからだ。そういう必要性に迫られているに違いない。

韓国の政権・与党が、挙げて対日融和戦略に取り組む姿は、おかしくもあるのだ。ついこの間まで、「反日」「克日」と賑やかだった韓国与党が、一転して「韓日関係の未来志向的発展の意志を確認した」という騒ぎだ。日本は、何も変わっていないが、韓国が「一人相撲」ではしゃいでいる格好である。

先の日韓首脳の電話協議で、文大統領は「両国政府とすべての当事者が受け入れられる最適な解決方法をともに探したい」としている。具体的には、昨年末に文・前国会議長が中心になった「日韓両国の民間寄付金を中心とする『代位弁済』(第三者が債務者に代わって弁済)方式」が再浮上するのであろう。当時、文大統領がこの提案に消極的であったことが、与党をまとめ切れず、廃案に追い込んだもの。

この裏には、日韓慰安婦合意の破棄でも「暗躍」した市民団体が、反対運動をリードしていたこともある。このリーダーの尹美香(ユン・ミヒャン)国会議員は、補助金横領の罪で在宅起訴されている。もはや、目立った反対運動はできない立場である。だが、他にも豪腕の反日市民団体はゴマンと存在する。

文大統領は、旧徴用工賠償でも解決するチャンスをミスミス失い、先見の明がないことを証明した。現在のように追い込まれて、やむなく現実を追認せざるを得ない「無様さ」は、なぜ起こったのか。

文氏は単細胞「日本は悪」

それは、文氏が「原理主義者」であることだ。原理主義者とは、「単一の価値観だけを信奉し、他者の価値観を排撃する」という悪い意味に使われている。文氏の場合、学生時代に軍事政権をめぐる民主化闘争で、火焔瓶を投げていた当時の国際政治状況に縛られているのだ。1980年代の「親中朝・反日米」というスローが、今も文氏の頭を支配している結果、「日本は悪」という偏った見方から離れられずにいるのだろう。そのツケが、現在の泥沼の日韓関係をもたらしたのである。

文氏の「原理主義者」を証明する材料は、先の国連総会での演説にも現れている。文在寅大統領は9月22日(現地時間)、国連総会の基調演説で、韓半島の平和の始まりは、平和に対するお互いの意志を確認できる「韓半島終戦宣言」だと語って、周囲を唖然とさせた。北朝鮮が、核放棄していない段階で「終戦宣言」したらどうなるか。北が勝利者になるのだ。こういう見え透いたことが分らない。これが、文在寅のすべてである。

米ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)で、アジア先任補佐官を務めたマイケル・グリーン戦略国際問題研究所(CSIS)先任副所長はこの日、次のように批判した。「終戦宣言は中国、ロシア、北朝鮮が国連軍司令部と韓米連合司令部、韓米連合軍事訓練を破棄せよと主張できる口実を与えるだけである。韓国の大統領が、国連で米国議会や政府の立場とこれほど一致しない演説をするのをほぼ見たことがない。終戦宣言で、韓半島に平和が実現できると考えるのは幻想」と酷評している。以上は、『朝鮮日報』(9月25日付)が報じた。

文大統領は在任中、何一つ外交面で業績を上げられないで退任することが決定的である。南北問題が、進展なく終わるのは確実だ。また、旧徴用工賠償問題が韓国側の寄付金で代位弁済して、以後の請求権を破棄させても、元の結果に戻るだけである。日韓関係は増進されないのだ。日韓慰安婦合意の破棄も、日本との間に深い溝をつくり日韓で憎悪感を増幅させるという非生産的な役回りを演じた。こうして、「文在寅とは何者ぞ」という深い疑問に囚われるのである。

金大中の複眼思考に学べ

文氏の評価をする時の尺度は、金大中(キム・デジュン)元大統領の存在である。文在寅氏は、金氏と同じ進歩派である。だが、金氏はリアリストであった。文氏が、原理主義者であることと180度の違いがあるのだ。日韓関係は、金大統領時代に大いに増進された。文大統領になると逆転して閉塞状態に追い込まれた。この違いは、金氏のリアリストと文氏の原理主義の違いに帰せられるであろう。

リアリストとは何か。リアリストは、「現実主義者」を意味する。「現実に即して物事を考える人・現実に即して物事に対応(処理)する人」を指している。つまり、リアリストは課題の解決に当って、現実の中から解決のヒントを見出すのだ。原理主義は、現実を無視して異次元から解決のヒントを見つけ出すと言えよう。

金氏は、大統領選で保守派の朴正煕(パク・チョンヒ)大統領の片腕だった金鐘泌(キム・ジョンピル)と手を結び当選を果たした。金政権では、首相を務めた人物である。進歩派が、保守派の「大番頭」(首相)と政策協定するとは離れ業である。自らの政策を実現するには、あえて保守派と協定するという度量があったのだ。

文在寅氏には不可能な離れ業だ。私が、金氏をリアリストと評するのは、こういう点を指している。金大統領は、犬猿関係にあった日韓関係に雪解けをもたらした。日本の小渕恵三首相と1998年、日韓共同宣言を発表し、韓国でそれまで禁止されていた日本文化開放を推し進めたのである。

韓国ドラム『冬のソナタ』が、NHKで放映(2003年)され、日本に一大韓国ブームを引き起した。日本から韓国への旅行者が激増し、『冬ソナ』撮影現場へ日本女性が大挙して押しかけるという「社会現象」をもたらしたのである。

業績ゼロ希有の大統領に

ここで、文在寅氏と金大中氏の政策手法を整理したい。

文氏は、原理主義者である。1980年代の「親中朝・反日米」路線から離れられないという宿命を負っている。現在の2020年代の日韓関係は、どうあるべきという現実感がないのだ。日韓で解決済みの「歴史問題=過去問題」に執着し、再び穿り返して日韓双方が血を浴びるという、これほど非生産的なことはなかった。

日韓慰安婦合意の破棄は、金儲け主義の市民団体が跋扈した結果と判明した。国家間の協定が、市民団体の思惑でひっくり返されては、国家として持つべき矜恃が消し飛んだのである。旧徴用工賠償問題も日韓基本条約で解決済みである。文大統領が、判決直前に韓国大法院(最高裁)を煽って、「人権に時効はない」という演説で誘導したことは疑いない。韓国司法は、大統領の支配権が及んでいるのだ。文氏は、自分で火を付け、自分で消さざるを得ないという、これ以上ない皮肉な立場に立たされている。

金大中氏は、日韓併合時代に生まれた世代(1925年生まれ)である。日本の苗字は「豊田」であった。大統領就任後の来日時に、日本統治時代の恩師を訪問し、「豊田です」と日本語で苗字を名乗ったこともあるほど。日韓併合を冷静に評価していたから、リアリストとなり得たのだろう。文氏の異次元から持ち出される「対日観」は、現実感がゼロであり空想の産物である。

文大統領は、対日観だけが異次元であったわけでない。経済政策もすべて「不合格」であった。文政権発足以来今年5月まで、ギャラップが毎週行う世論調査の累計140回を集計した結果、文大統領を支持する理由は「経済政策」との回答が皆無か、1~2%にすぎないケースが129回にも達していたのである。「雇用創出」との回答も0~2%が、113回に上っている。以上は、『朝鮮日報』(5月22日付)が報じた。

文政権の経済政策は不合格であるにもかかわらず、「積弊清算」、「日韓対立」、「米朝・南北首脳会談」、「新型コロナウイルス」などが、文大統領の支持率を大きく押し上げ、経済の失政を覆い隠してきたのである。文大統領は、言葉巧みに「平等・正義・公正」を演説にちりばめ、進歩派の真髄のごとき演出をしてきた。韓国国民は、この言葉に酔わされてきたのだ。だが、一度は効いた「魔法の言葉」も、聞かされるたびに効用は減る。言葉でも「限界効用逓減の法則」が適用できるだろう。

文大統領の任期は、2022年5月までである。来年3月以降は、次期大統領選の候補者選びが始まる。政界の話題は、文政権から離れて次期政権へ動いて行くのだ。こうなると、文氏が、大統領として実質的に采配を振るえるのは後、5ヶ月しかない。この間に、韓国で旧徴用工賠償問題の法案成立は可能だろうか。

文政権は、国内の市民団体が主張する日本への謝罪要求とか、最終的な請求権を韓国政府が持つべきとかいう「雑音」を消せなければ、日本政府が受け付けるはずがない。韓国市民団体は、NPO・NGOの国際的概念である「政治的中立・非収益事業」を大きく外れて、文政権支持派に鞍替えしている。文政権が、こういう「曲者」団体を納得させて、旧徴用工賠償問題の法案を成立させることは難しい問題だ。まさに、補助金を与えて飼い慣らしてきた市民団体に、文政権は手を噛まれる結果が待っているだろう。

文在寅氏の外交面の成果は、南北融合目的が米中対立の長期化を背景に不可能であること。日韓関係は、極めて修復の困難な局面に向かっている。そのため、旧徴用工賠償問題は韓国国内で、解決するほかなくなっている。

経済面では、世論調査の結果でも極めて低い評価である。文政権の大幅な最低賃金引上げが、雇用を破壊した。企業規制が激しく「規制緩和」と逆行している。「企業性悪説」に立っており、規制強化が「平等・正義・公正」を実現する道と錯覚しているのだ。韓国経済は、こうして衰退するほかないであろう。

image by: 青瓦台 - Home | Facebook

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経済記者30年と大学教授17年の経験を生かして、内外の経済問題について取り上げる。2010年からブログを毎日、書き続けてきた。この間、著書も数冊出版している。今後も、この姿勢を続ける。

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