3.コンプライアンスとエシカル
アマゾンは米国企業であり、米国のファッション観を持っている。米国にとって、アパレル製品は工業製品の一部であり、大量生産する商品である。欧州のように、一部の富裕層のための手工業的ファッション観ではない。
従って、アマゾンPBも付加価値の高い個性的なファッションではなく、ベーシックでリーズナブル価格の商品になるだろう。
商品企画といっても、商品のデザインやパターンよりも、どこでテキスタイルを調達し、どこで縫製を行うか。そのコストパフォーマンスを厳しくチェックすることになる。
また、米国では、日本以上にコンプライアンスが重視される。環境や人権に配慮しているという第三者認証を求めるはずだ。
更には、法律に定められたことでなくても、倫理的な活動を行うというエシカルな動きも顕著になっている。
LGBTに対する配慮、身体障害者の雇用、フェアトレード等を考えたモノ作りが求められるはずだ。
日本企業は商品の品質やデザイン、コストといったモノに対する意識が高いが、意外に社会的な配慮が掛けている場合が多い。しかし、社会的意識、社会的配慮を高めることこそが、事業企画であり、商品企画なのだ。
アマゾンPBがエシカルを強く押し出し、消費者が支持すれば、日本市場に対応している日本企業も社会的配慮が求められるだろう。
4.更なるアパレル市場の二極化
これまでは、店舗販売を中心としたグローバルマーケティングだったが、アフターコロナは、店舗販売からネット販売への流れが加速するだろう。
ネット販売の巨人はアマゾンであり、アマゾンを中心にアパレルビジネスが回るようになるのではないか。
しかし、日本のアパレル企業が淘汰され、その穴を全てアマゾンが埋めるとも考えづら
い。
アパレルとは工業製品ではなく、もっと個人的なものであり、自分の個性を表現するものという考え方もある。そうなると、セルフソーイングの流れが出てくるかもしれない。
あるいは、オーダーする段階で、様々なオプションが選べる服。生地を選び、ボタン、ポケットなどを自由に選んで、オリジナルの服が作れる。そんなサービスも生れるだろう。
デザイナーも服を作るだけではなく、服を着こなすプロとして、インフルエンサーになっていくのではないか。
自分で作り、同時にバイヤーとして、服を仕入れ、それらをコーディネートして、自分がモデルとなってファッション情報を発信する。専門の技術を磨くよりも、多面的に才能やセンスを発揮するデザイナーが求められるようになるだろう。
社会的なファッションと個人的なファッション。この二つの流れがより鮮明になっていくと思う。
編集後記「締めの都々逸」
「世界を動かす アマゾンよりも あたしゃ 自作の服を着る」
社会的な服と個人的な服に二極化する。どちらも企業の利益のためではないということですね。
アフターコロナは企業のために働くよりも、社会のためにはたらく。あるいは、個人のために働くことになるのではないでしょうか。
そもそも、企業って何のために存在しているのでしょうか。それは、個人ではビジネスができない時代の装置だったように思います。
企業は個人を幸せにしません。でも、社会のための企業、個人のための企業なら幸せになれるかも。
いずれにしても、他人に支配されるのは嫌ですよね。支配される安心感もありますが、僕は嫌だなぁ、と思います。(坂口昌章)
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