NTTグループ32万人の命運を握る「ドコモ値下げ」━━国際競争力強化を狙うなら「ドコモを親会社」にすべき
NTTドコモの完全子会社化の狙いについて、NTTの澤田純社長は、NTTグループの国際競争力強化をあげた。
確かにクラウドはアマゾンやグーグル、マイクロソフトが日本に進出しており、NTTグループの居場所がなくなりつつある。
コロナ禍でビデオ会議アプリを当たり前のように使うようになったが、ZoomやGoogle Meet、Skype、Teamsといったあたりが主流であり、そこに日本企業の影すらない。
共同会見ではモバイルであるドコモを中心にNTTコミュニケーションズやNTTコムウェアなどもNTTドコモに統合していく方向性を示した。
確かに法人向け営業となればNTTコミュニケーションズなどが強く、モバイルとのシナジーが発揮されるかもしれない。一方、NTT東西は光回線を提供するためだけの会社となっていきそうだ。
それならば、いっそのこと、NTTドコモを頂点としたNTTグループに再編すればいいのではないか。NTTドコモであれば、世界的にも顔が効くし、国内においても2000店舗を超えるドコモショップがあり、顧客との接点もある。大量にCMを流していることもあり、今のブランド認知はNTTよりもNTTドコモの方が浸透しているのではないか。
5G並びに6G時代においても、やはりモバイルが中心となって世界が変わっていくのは間違いない。ローカル5Gはあくまでおまけに過ぎない。NTTよりもNTTドコモを前面に押し出したNTTグループにするべきだ。
一つ気になるのが、NTTドコモが本当に値下げを実現した時、NTTグループに大きな影響は出ないのかという点だ。
澤田社長は「完全子会社化によってNTTドコモの経営基盤が安定することで、値下げが実現できる」という。
ただ、NTTグループの中でも稼ぎ頭であるNTTドコモで、大幅値下げを実現すれば、NTTグループ全体の経営基盤が脅かされることにはならないのか。
NTTドコモ単体であれば、従業員8100名(グループ2万7558名)だが、NTTグループ全体となると連結ベースの従業員数は31万9050名まで拡大する。
今後、NTTドコモがNTTコミュニケーションズやNTTコムウェアを取り込むとなると、組織が巨大化すると思われるが、値下げによって収益は悪化するのが見えている。
このグループ再編で、NTTとしては、人材のリストラなども検討していたりするのだろうか。
菅総理の値下げプレッシャーで、NTTグループがリストラに着手せざるを得ないなんてことになると、「本当に値下げが必要だったのか」という議論にもつながりそうだ。NTTに入社した人たちも「NTTでリストラ」なんて想像もしたことなかっただろうが、現実味を帯びてきたのは間違いない。
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