BTSファンは敏腕投資家?注目IPOビッグヒットの株価急落にも冷静なワケ

2020.10.22
by サイタマコ
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K-POP界で不動の人気を見せるBTS(防弾少年団)の所属事務所であるビッグ・ヒット・エンターテインメント(以下 ビッグヒット)が10月15日、時価総額11兆ウォン(約1兆円)もの値を付けてソウルの韓国取引所に上場した。だが上場日に高値をつけて以後、株価は下落を続けている。

「そもそも公募価格が高すぎる」「投資した人が心配」「兵役問題はどうなったのか」といった意見が聞こえてくるが、筆者をはじめBTSのファンは、なぜそこまで不安になるのか?と疑問に感じてもいる。BTSはもちろん、ファンの生態にも関心が集まっている今、あえてファン視点から見たビッグヒット上場の裏側を考察してみたい。

BTSファンから見れば、現在の株価は高くない

まずは、上場までの経緯を改めて見ていこう。ビッグヒットが上場を目標に申請した新規公開株(IPO)では、713万株を公募し、応募倍率は1,000倍を超えるほどの注目が集まっていた。その一方、公募価格が13万5,000ウォン(約1万2,460円)に設定されていたため、「高すぎる」と申し込みにためらいのある投資家も多くいたという。

だが、投資家たちが「公募価格が高すぎる」と言うほど、この金額は本当に高いものなのか? アーミー(BTSファンの名称)にとっては、「メンバーのためなら」「グッズを買うのと同じ」といった声がTwitterなどのSNSでも挙がっているように、推しのために投資できる絶好のチャンスなのだ。

株を購入し投資することで、推しに対しての気持ちの表現、いちファンとしての達成感、そしてBTSの今後の活動への期待を込めた13万5,000ウォンであって、ただ金額が高すぎるだけではない。

そしてビッグヒットは10月15日、韓国取引所にて無事に上場し、時価総額が11兆ウォン(約1兆円)にまで及んだ。この額は、三大大手芸能事務所の時価総額と比べても大きく上回ったという。

例に挙げると、NiziU誕生でも大注目を集めるJYPエンターテインメントの時価総額が1兆ウォン(約1,000億円)。さらに世界で活躍するBLACKPINKやBIGBANGを抱えるYGエンターテインメントの時価総額は7,667億ウォン(約766億円)。そして1998年から海外進出を行い、EXOや東方神起などが所属するSMエンターテイメントの時価総額は6,999億ウォン(約699億円)である。これら事務所の時価総額を合計しても、ビッグヒットの11兆ウォンには届かない額だというから相当なものだ(10月22日時点)。

無名の事務所であったビッグヒットが、大手芸能事務所を上回るということは、ファンにとっても、もちろんメンバーたちにとっても今まで頑張ってきた成果のひとつと言える。大事な日に「〇〇記念日」とつけることが多い韓国文化を考えると、10月15日を「上場記念日」に加えるアーミーも少なくないだろう。

そんな好調なスタートを切ったと思いきや、15日の上場以来下落が続いてしまっている。上場初日には、公募価格の13万5,000ウォンから始値27万ウォンまで上がったのだが、上場からちょうど1週間たった10月22日現在で、18万ウォンと10万ウォン近い下落となってしまった。

株価急落の要因としては、買い目線のファンたちに対して機関投資家が大きく売り越しており、需給悪化が懸念されていることが挙げられる。さらに、ビッグヒットの売上の9割をBTSが占めているにもかかわらず、年長メンバーが兵役を控えていることも悪材料のひとつと言われているのだ。

ビッグヒット株は国内ではSBI証券で取引されており、ネット上では日本の投資家アーミーを心配する声も挙がっているのだという。

株価の下落が続くなか、こういった声が挙がるのもわからなくはないが、市場関係者や一般の投資家とファン(投資家アーミー)では、そもそも「見ている景色が違う」ように感じられる。

BTSに人生を捧げる“アーミー”たちは生粋の投資家

私たちアーミーが見えている景色はどうのようなものか。BTSを好きになったその瞬間からいろいろな意味においての投資家であるアーミーには、現状に対する不安はない。今では世界中にファンを持つ韓国を代表するグループだが、数々の困難を乗り越えてきた彼らの過去を知っているからだ。

今回上場したビッグヒットについて簡単に説明すると、大手芸能事務所のJYPエンターテインメントから独立した作曲家のパン・シヒョクによって2005年2月1日に設立された。人気アイドルグループが数多くいるなか、当時無名であった小さな事務所から2013年6月13日にデビューしたのが、BTSである。

デビュー当時はあまりよくない評価も多かったようだ。ちなみに、BTSの楽曲「2! 3!」の歌詞には、メンバーたちが言われてきたであろうキツい言葉たちが並べられているので一度聞いてみてほしい。

こういった過去があるものの、イギリスの歴史あるウェンブリー・スタジアムでの公演や、初めて英語で歌った「Dynamite(ダイナマイト)」がアメリカbillboard(ビルボード)の「HOT100」で1位を取るなど、メンバーたちが掲げてきた高い目標を果たせるほどのビッグなアーティストに上り詰めた。

大迫力のパフォーマンス、ファンの心を掴む歌詞、そしてかっこいい一面とは裏腹にプライベートで見せるお茶目な一面など、ファンを虜にする魅力が詰まっている。

そんな輝かしい一面がある一方で、2017年のビルボード・ミュージック・アワードで「Top Social Artist」を初受賞したのち、期待される重圧からか精神的に追い詰められたメンバーたちの間で「解散」の話が挙がった。だが話し合いの結果、アーミーのためにも再度気を引き締めて続けることになり、数々の結果を残してきたのだ。

この話は、2018年の年末に行われた「2018 Mnet Asian Music Awards」で最年長メンバーのJINが大賞受賞スピーチで述べたコメントで明かされた。このスピーチを聞いた筆者は、「これだけの活動をしてきたのに『解散』の話が挙がっていたなんて…」と驚きが隠せなかったのと同時に、恩返しのごとく「BTSのために生きていく!」と決意した。この時のスピーチを聞いて同じことを決心したアーミーは少なくないだろう。

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