福岡「傾きマンション」建て替えを25年も長引かせたJR九州の旧態依然

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完成直後から不具合が続出し、住民たちによる25年にも及ぶ調査と訴えの末、ようやく販売サイドが責任を認め建替えの方向で話が進みつつある、福岡市の欠陥マンション。なぜこのような問題が起き、ここまで時間がかかってしまったのでしょうか。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』ではマンション管理士の廣田信子さんが、このマンションの共同企業体の中心である「JR九州」にその原因を求めています。

福岡の欠陥マンション、25年の戦いで建替えへ

こんにちは!廣田信子です。

建物が傾くなどの欠陥が判明していた福岡市のマンション「ベルヴィ香椎六番館」がどう決着するか、注目を集めていました。8月30日、補償内容に関するJV側の住民説明会があり、部屋の傾きの大きさや居住年数などに応じて補償する、建替え決議がなされれば建替えに応じる…という説明だったといいます。

理事長によると、住民アンケートで全60戸のうち5分の4以上が建て替えに同意し、区分所有法が定める建て替え要件を満たしており、建て替えの方向で進むことになるだろう…と。11月に建替え決議のための総会招集の予定だといいます。

このマンションは平成7年に完成。JR九州と若築建設、福岡商事のJV(共同企業体)3社が販売したものです。入居当初から傾きやひび割れなどの不具合が続出しており、長い戦いの末、25年たった今年7月にようやく、3社のトップが施工不良を認め、記者会見で10秒間頭を下げ謝罪した…という経緯がありました。まさに大逆転!全面謝罪…10cm超傾く欠陥マンション住民の怒りと執念が事態を動かした…とニュースになりました。ようやく、支持層に届いていない杭があることを認めたのでした。

マンション室内の映像では、床を転がしたボールが勢いよく転がり止まらない状況でした。築1~2年で、不具合が出てきて、入居後まもなくヒビ割れが相次いだといいます。当時、JV側はその箇所を補修したうえで、主要構造部分への影響はないことを確約します…と言っていたのです。

しかし、それ以降も異変は生じ続けました。別の住民の部屋では、天井と壁に「隙間」が現れていました。夜、明かりを消しても隣の部屋の光が漏れているのです。映像で見ると、これが鉄筋コンクリートの建物かと思うような状況です。

ここは、駅から徒歩3分の好立地。7棟からなる大規模開発の団地の中の1棟が「ベルヴィ香椎六番館」です。アクセスも良く、眼下に公園を見渡せ、相応の資産価値も見込まれることもあって大人気。販売価格が約3,000万円(当時の相場としては高め)でも、「JR九州」のブランドイメージも相まって、25年前の入居倍率は30倍にのぼったといいます。

パンフレットには、「ここにしかない。オンリーワンの選択。」「オーナーとマンションの幸福な関係が始まる。」というキャッチコピーが並んでいるといいます。このキャッチコピーに心惹かれ、抽選に当たった住民は、喜んで入居したのに、皮肉なことに長年、不安な生活を強いられることになったのです。しかも、7棟ある中で、欠陥が出ているのはこの棟だけ。住民の精神的な苦痛は大きかったことでしょう。

調査で、「同じ階で104mmの高低差」があることが判明し、たまらず、住民は2017年、約200万円をかけて専門業者によるボーリング調査を独自に実施ました。すると…本来、硬い岩盤「支持層」まで杭を打ち込む必要があるのに、このマンションでは、「支持層」に届いていない杭があるという調査結果が出たのです。横浜の傾いたマンションと同じです。この結果に慌てたJV側も調査を行ったのですが、その結果は、地震などの外的要因が影響を及ぼした可能性は否定できない。傾斜の原因について、今後、追及調査は行わない…と驚くような回答が届いたのです。

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