福岡「傾きマンション」建て替えを25年も長引かせたJR九州の旧態依然

 

不具合が起きているのは、団地内の7棟のうちこの1棟だけ。納得できない住民は、数々の欠陥住宅を診てきた民間の検査会社を頼り、さらに500万円をかけ、前回とは別の杭2本などを新たに調査しました。すると約4m、約7m、と杭の長さが不足しているという新事実が判明したのです。住民は、とんでもない話と驚くと共に、やっぱりそうだった…と。これで、ようやく、JV側が欠陥を認めるに至ったのです。

住民は、欠陥の調査に計900万を費やしています(このケースでは、団地内の1棟ということで、棟の住民の意見をまとめる主体にも苦労されたと思います)。人生最大の買物となるマンションに瑕疵が疑われたとき、結局は自分たちで専門家に調査を依頼し、欠陥を明らかにしないと自分たちの安全は守れないのです。しかし、住民の意識をまとめて、調査費用を支出するのは、簡単ではありません。独自調査の合意形成にいたらず、うやむやになっているケースはたくさんあると思います。ここでも、初めて不具合が確認されてから20年以上かかっているのです。

施工の不良を認めるのに、なぜここまで時間がかかったのか…という問いに、JV側は…「言い訳になってしまうかもしれないが、その間、福岡県西方沖地震や熊本地震があったりとか、さまざまなものがある中で、見解が若干違うというところで時間が経ってしまったと思います」…と、意味不明の発言をしています。

同じ団地内の他の棟という、簡単に比べられる存在があるのに、この欠陥に気づかないなんて、素人の発言か…と、思わざるを得ません。

そう、JVの中心、「JR九州」はマンション販売の素人なんです。素人の副業なのに権威主義がはびこっている…それゆえのお粗末さだという声が上がっています。購入者が信頼した「JR九州」というブランドが、逆に、ここまで長引かせた原因でもあるのです。で、最後の最後、「JR九州」のブランド故に、建替えに応じる力があった…という皮肉もあるのです。

売主がすでになく、欠陥問題を持っていく相手がない、売主だけでなく、建設会社も倒産している…というマンションも少なからず存在しているのですから…。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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