菅政権の無責任。“Go To Hell”で国民を追い込む日本のお寒い現実

 

たまに現金をくれる人がいたので、そんな時はネットカフェに行き、シャワーを浴びて体を休めたと言います。彼女を見るに見かねて、しばらく居候させてくれた女性もいたそうです。いつも夜の公園で寝ている彼女を心配して「市役所の福祉の窓口に相談したほうがいい」とアドバイスしてくれた人も複数いたそうです。

しかし、彼女は「健康な自分が市役所に相談することは恥ずかしいこと」と思い込んでいました。病気で働くことができないのならともかく、健康な自分が福祉に頼るのは「恥ずかしいこと」であり「いけないこと」だと思い込んでいたのです。さまざまな理由で困窮して生活保護を受給している人々のことを、まるで犯罪者か何かのように吊るし上げる昨今の風潮が、彼女にこうした意識を植えつけたのかもしれません。

こんな路上生活が半年も続いた今年8月、誰にも相談できないまま公園から姿を消した女性は、とうとう限界を迎えてしまいました。「私も美味しいものを食べて、新しい洋服も買いたい」、肉体的にも精神的にも追い詰められた彼女は、そう思うと、カッターナイフを握りしめ、何度も躊躇した果てに、真珠販売店に足を踏み入れました。そして、店員にカッターナイフを向けて「お金を出してください、切りますよ」と脅したのです。

しかし、その店員が警察に通報しようとしたため、女性はすぐに店から逃げ出し、その足で交番に駆け込みました。そして、今、自分がしてしまったことを、警察官にすべて正直に話し、その場で逮捕されました。逮捕された時の彼女の所持金は、わずか257円だったそうです。

10月21日、福岡地裁で行なわれた裁判で、女性は自分の罪を認め、真珠販売店と店員に謝罪した上で「普通の生活がしたい」と述べたそうです。恐喝未遂と建造物侵入の罪で「懲役1年2月」が求刑されていた彼女に「懲役1年2月、執行猶予3年」の判決が言い渡されました。そして、裁判官は次のように続けました。

「世の中は自分で何でもできる人ばかりではありませんから、さまざまな支援制度があるのです。困った時には公共の窓口に相談することを考えてください」

女性は深くうなずきました。彼女を担当した国選弁護人によると、しばらくは国の支援制度、一時的に宿泊場所と食事が提供される「更生緊急保護制度」を受け、生活の立て直しを進めて行くそうです。

この女性のように、新型コロナの影響で仕事を失ってしまった人は、今年2月から9月末までに「約6万人」と報告されています。しかし、これは、あくまでも氷山の一角です。あたしのようなフリーランスの多くは、ほぼ仕事ゼロの状態が半年以上も続いていますが、こうした調査の対象にはなっていません。また、解雇されずとも給料を減額されて自宅待機させられている解雇予備軍も数多くいます。これら水面下の生活困窮者まで含めると、今年12月末までに「新型コロナによる失業者」は100万人を突破するという試算もあります。

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